KDDI通信障害の教訓 「0円」からできるリスク分散とは房野麻子の「モバイルチェック」(2/3 ページ)

» 2022年07月07日 13時00分 公開
[房野麻子ITmedia]

情報周知のさらなる工夫

 まず、携帯電話会社はユーザーに対する周知を工夫することが求められる。2021年10月にドコモが通信障害を起こした際は、「一部復旧した」という報道を聞いたユーザーのアクセスが急増し、結果、通信の不安定な状態が長引いてしまった。ユーザーへの周知の難しさを感じさせた事例だった。

 今回のKDDIの障害でも告知はされていたが、少し工夫が足りなかった印象だ。障害情報は各サービスのWebサイトに掲載されていたが、KDDIのスマートフォン1台しか持っていない人にとってはWebは閲覧できず、不十分だろう。もちろんショップでも案内されていたが、ショップによって初期の対応にバラつきがあったと指摘する記者もいた。

 復旧作業自体は3日の夕方に終了。4日朝には、音声通話は利用しづらいもののデータ通信は概ね回復した。同日夕方には音声通話、データ通信含め、ほぼ回復した。Webサイトの4日16時現在の障害情報では、つながらない場合は電話機の電源オン/オフ操作を試すように案内している。

 ただ、実際には5日になっても利用できないという声があったようだ。電話機の機内モードや電源のオン/オフをするといいということが、あまり伝わっていなかったように思う。また、復旧作業を終了した後も50%の流量制限を行い、少しずつ緩和されていったのだが、記者からは「ほぼ回復」の前に流量制限緩和の情報を知りたかったという意見も出た。50%制限が30%、25%と段階的に下がっていけば、回復の進捗がつかめただろう。

 筆者も含めて報道する側も、ユーザーに本当に必要な情報をいち早く伝えること、技術的な表現を分かりやすく伝えることを、改めて心に刻んでおきたい。

総務省の役割

 今回、総務省の担当者が障害に対応するKDDIの現場に駆けつけたことが注目された。こうしたことは初めてだという。

 総務省は「もっとお客様目線で広報すべき」とアドバイスしたという。KDDIの担当者からは「総務省担当者の視点が役立った」というコメントもあった。

 ただ、総務省にはもっと法制度面を整えることを期待したい。一部の記者からは、通信障害が起こった際の緊急通報のローミングや、海外で採用されているところがあるというSIMなし緊急通報を可能にすべきではという意見があった。そうしたことは、やはり総務省が音頭を取って環境を整えていく必要がある。

 総務省では、災害時など緊急時におけるローミングや他社のネットワーク利用について検討しているという。確かに東日本大震災が発生した11年には「大規模災害等緊急事態における通信確保の在り方に関する検討会」が行われ、音声通話の確保やユーザーへの情報提供の在り方などがまとめられている。現在も「災害時における通信サービスの確保に関する連絡会」は定期的に行われている。

 今後は災害だけでなく、通信障害時の対応も含めて決めておくべきではないかと感じる。通信障害も人命に関わる可能性があるだけに、いち早い対応を期待したい。

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