10万円もする「iPhone13 mini」がなぜ1円? そのカラクリを解明する房野麻子の「モバイルチェック」(1/3 ページ)

» 2022年03月25日 18時00分 公開
[房野麻子ITmedia]

 新生活が始まる春は、スマホが年間で最も売れる季節といわれる。各キャリア、店舗では割引やポイントバックのPOPが賑やかだ。最近は量販店で「iPhone 13 mini」や「iPhone 12 mini」が「実質23円」や「一括1円」と表示されていて話題になった。

都内量販店のPOP。人気のiPhoneが実質数十円で手に入る

携帯電話割引を巡る攻防

 携帯電話端末の割引と、それを規制する当局との攻防には長い歴史がある。

 まず、2000年代前半の回線契約と端末の安価なセット販売から、19年10月に施行された改正電気通信事業法による「(端末代金と通信料金の)完全分離」までの道のりは、野村総合研究所パートナーの北俊一氏の記事『総務省とキャリアの“いたちごっこ”に終止符は打たれるのか? 20年間の競争と規制を振り返る』に詳しいので、興味ある方はお読みいただきたい。

 現在、19年の改正電気通信事業法によって、通信事業者間の適正な競争関係を阻害するおそれがある利益提供(値引きのこと)は禁止されている。継続利用と端末の購入を条件とする値引きは一律禁止され、回線契約を伴う端末購入の場合の割引の上限は、原則2万円(税抜き)までと制限されている。

 この法改正までは、ドコモは「月々サポート」、auは「毎月割」、ソフトバンクは「月月割」として、購入する機種に応じて、毎月、通信料金から割引が受けられた。割引額は契約する料金プランや購入する端末によって決められる。24カ月間の割引を受けると端末価格分が相殺され、実質0円になる機種もあった。

 割り引いた結果が0円で終わるなら、まだ良かったかもしれない。ユーザー獲得のためにMNPなどを条件として高額なキャッシュバックを提供する店舗もあり、端末を買い換えると得をするという歪な状態も起こっていた。端末を長く使って買い換えない人が、頻繁に買い換える人が得る割引やキャッシュバックの原資を支払うことになり、それは不公平だとして問題視されたわけだ。

 行き過ぎたキャッシュバックは大問題だが、月々サポートを始めとする毎月の割引は、いわゆる“2年縛り”となってユーザーの乗り換えを難しくしていた。高額な契約解除料ともども、市場の活性化を妨げるとして問題視されたのだ。

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