NTTドコモが、4Gの周波数を利用して5Gのエリア展開を行うことを発表した。ドコモはこれまで、3.7GHz帯、4.5GHz帯、28GHz帯という5G専用の周波数帯を使ったエリア展開を「瞬速5G」として行ってきたが、それに加え、700MHz帯、3.4GHz帯、3.5GHz帯など4Gで使っていた周波数を利用した5Gエリアの展開も進めていく。ただし、プレスリリースには「4G周波数を利用した5Gの通信速度は、4Gと同等となります」との注釈がある。
5Gは「高速大容量」「低遅延」「多数同時接続」が特徴とされているが、その3つすべてを満たせるのは、電波だけでなくコアネットワークも含め、すべての通信設備が5Gになった「5G SA」(SAはStand Alone:スタンドアローン、単独)方式だ。現在はコアネットワークに4Gの設備を使うNSA(Non-Stand Alone)方式で展開されているエリアが多い。
NSA方式の5Gでは、一部で4G用の設備を使うため、5Gサービスを早く導入できるという利点がある。そのため5G開始当初はNSA方式の5Gが広まっていった。NSAでは、端末と基地局が通信する際に、制御信号は4Gの設備を使ってやり取りし、5Gの設備はデータ信号だけを伝送する。そのため、NSA方式の5Gでも高速大容量通信は実現できる。
それなのに、4G周波数を利用した5Gの通信速度が、4Gと同等となるのはなぜか。それは周波数の帯域幅の違いだ。基本的に、周波数の帯域の幅が広いほど多くの情報を伝送できる。帯域幅が広いと一度に大量のデータを伝送できるので短時間でデータをやり取りでき、結果的に通信速度が速くなるというわけだ。
下の表を見ていただくと分かるが、ドコモが5Gに転用するとしている700MHz帯は20MHz幅、3.4GHz帯と3.5GHz帯はそれぞれ40MHz幅だ。一方、5G用として割り当てられた周波数帯は、3.7GHz帯と4.5GHz帯が200MHz幅、28GHz帯は400MHz幅となっており、最大10倍もの幅がある。
5G専用の周波数帯を使うと帯域幅が広いので超高速大容量通信が可能だが、4G用の周波数を使った場合は帯域幅が変わらないので、速度は4Gと同等になる。こうしたことから、転用周波数を使った5Gは「なんちゃって5G」と揶揄(やゆ)されることもある。
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