金融サービスは、現代社会にとって欠かせない存在だ。銀行口座にお金を預ける、クレジットカードで買い物をする、モバイル決済を利用するなど、生活のさまざまな場面で登場する。それだけに利用者にとって使いやすいものであるべきだが、実際には何かと手間がかかると感じている人も多いのではないだろうか。
金融サービスが使いにくいものになる理由の一つは、犯罪に利用される可能性があるためだ。例えば、ある銀行口座から別の口座に送金を行う処理一つ取っても、マネーロンダリングに悪用できる。従って金融サービスは、日常に欠かせない存在として利便性を高める一方で、犯罪に利用されない、利用されても闇に葬られてしまわないように、さまざまな管理の仕組みを設けている。そうした仕組みが、利用者に「面倒くさい」と感じさせる一因になっているわけだ。
しかしそうした管理の仕組みも、新たなテクノロジーの導入や創意工夫によって、利用者の手間を下げたり、新たな価値を生み出したりすることができる。そうした例の一つが、今回取り上げる「eKYC」である。
eKYCは「イーケイワイシー」と発音し“electronic Know Your Customer”という英語を略したものだ。日本語では一般に「電子本人確認」と訳されている。eKYCはKYC、すなわち「本人確認」を電子化するという概念だ。まずはKYCとは何かを説明しよう。
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