──従業員が規定に違反していた場合、口頭での指導や社内的な処分など会社側はどこまで対応ができるのでしょうか?
佐藤弁護士: 従業員が規定に違反した場合、会社側は、事業に与える影響などを踏まえた上で、ケースに応じて、違反した従業員に対し、口頭で指導したり、社内的な処分を下したりすることができます。ただし、不利益な処分を下す場合には、特に慎重になる必要があります。
例えば、先述した地下鉄運転士の事例において、会社は、髭規制に違反した地下鉄運転士の人事考課で減点評価をしたのですが、人事上の不利益である減点評価について、裁判所は行き過ぎとして、違法と判断しています。
他にも、トラック運転手が髪色を理由に運送会社を解雇された事例で、「髪色が業務に具体的な悪影響を及ぼした証拠はない」などとして、解雇が無効とされた事例などもあります(福岡地裁1997年12月15日判決)。
服装規定の違反があった場合、どの程度の処分が許されるかについては、従業員の違反の程度も関係してきますが、必ずしもそれだけで判断できるものではありません。先ほどのトラック運転手の事例では、運転手は髪色をかなり明るく染めており、取引先から、「好ましくない」といった連絡が会社に入ったのですが、そうした事情を踏まえても、解雇は違法、無効と判断されています。
処分を検討する際は、服装規定に違反したことにより、具体的に業務にどのような悪影響が及んだのかを重視し、それに見合った処分にとどめることが重要です。その際、従業員の置かれた立場、仕事内容、規則に従うことによって従業員が被る不利益の程度、処分までの経緯、処分の内容や程度などを総合的に考慮するようにしましょう。
──ありがとうございました。
松山市は、2020年5月に市民から「男性職員が白のポロシャツで応対していて、職務中の服装として印象が良くなかった」という意見があったことを公表。野志克仁市長が、「男性の服装はクールビズの一環であり、ポロシャツの着用に、ご理解をお願いします」回答した。
今回の規定は厳しい半面、度を越したクレームから職員を守るという意味合いも含まれている。佐藤弁護士に回答してもらったように、さまざまな角度から服装規定を作成ことはもちろんだが、社外からの指摘への対応についても規定を設ける必要があるのではないのだろうか。
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