「社会人お笑いライブ」の舞台裏 うまくいかない人の“受け皿”になれるか週末に「へえ」な話(1/4 ページ)

» 2022年07月23日 08時02分 公開
[土肥義則ITmedia]

 新宿で知る人ぞ知るイベントがある。新宿三井ビルディングで働く会社員がステージに立って、それぞれの美声を披露する「のど自慢大会」だ。超高層ビルがいわば“フェス”になるわけだが、こうしたコンセプトの“お笑い版”を企んでいる組織がある。「社会人お笑い協会」(東京都台東区)だ。

 「ん? 会社対抗の漫才ってこと?」と思われたかもしれないが、その通りである。曲を歌うこととは違って、お笑いをするのはハードルが高い。筆者の周囲で「趣味で漫才をやってるんだよね。ちょっと聞いてくれる?」といった人はいない。というわけで、ムリムリムリと思っていたが、当の本人たちはマジマジマジなのだ。

(提供:ゲッティイメージズ)

 社会人お笑い協会が産声をあげたのは、2017年のこと。当時、社会人1年目の奥山慶久さんが発起人となって、お笑いライブを始めたのだ。「ステージに立ちませんか?」「お客さんを笑わせませんか?」と演者に声をかけまわったところ、参加者は24組に。

 初めての試みにもかかわらず、それだけの人が参加したことにちょっとびっくり。しかし、である。会場に詰めかけた、お客は30人ほど。お客よりも演者のほうが多いので、厳しい船出だったようにも感じるが、奥山さんは違う見方をしていた。「いけるんじゃないか。伸びしろしか感じられませんでした」と受け止めていたのだ。

 紹介がちょっと遅れてしまったが、このライブのステージに立つには条件がある。プロは参加できないし、養成所に通っている人もダメだし、学生もお断りしている。スポットライトを浴びることができるのは、社会人だけなのだ。この話を聞くと、「シロートのお笑いを見るってことだよね。うーん、集客に苦労しそうだなあ」と想像されたかもしれないが、初年度はイベントを4回実施して、チケットは半分ほど売れた。

 その後、ライブの回数は増えていって、いまでは月イチペースで開催しているのだ。演者たちに「〇月〇日にやりますよー」と告知をすると、「オレもオレも」「ワタシもワタシも」といった感じで、すぐに定員を超えることも。仕方がなく、抽選で舞台に立てるかどうかを決めることもあるそうだ。

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