2019年、当時の菅義偉官房長官が世界トップクラスのホテルを全国に50カ所程度新設するという考えを示したことが話題になった。最近でも6月8日に、日本政策投資銀行関西支店が、関西で新型コロナウイルスの収束後、1泊10万円超の高級ホテルの客室が約1300室足りなくなるとの試算を公表している。
ところで、高級ホテルといえば、外資系に代表されるラグジュアリーなブランドをイメージするが、そもそもラグジュアリーホテルとは何を指すのだろうか。
国際的には、ホテルの格付けで用いられる五つ星がラグジュアリーとされる(アップスケール→ミッドプライス→エコノミー→バシェットと★が少なくなっていく)。とはいえ、国や審査期間、ブランドによっても基準は異なる。「日本の高級ホテルが○○で五つ星獲得」などというニュースを目にするが(フォーブス・トラベルガイド スターアワードは有名)かような意味合いである。
他方、日本では広く信頼性が担保されている格付け機関はない。すなわち客観的に画一された基準があるわけではないので、日本におけるラグジュアリーホテルとは「……すごい高級?」というイメージを表すワードとして認知されている向きが強い。
ホテルのラグジュアリーについて、国際的な比較検討に際しては正確性も鑑みる必要は高いが、国内の高級ホテルについてつづる本稿では、格付け機関でいう“ラグジュアリーという位置付け”ではなく、“最上級クラスの高級ホテル・宿”という意味合いで用いることをお許しいただきたい。
そもそも日本における展開はどのように進んでいったのか。いまの高級ホテルシーンを読み解く前提として振り返っていきたい。
高級ホテルの代名詞といえば「御三家」だろう。御三家とは、「帝国ホテル 東京」(日比谷)、「ホテルオークラ東京」(虎ノ門)、「ホテルニューオータニ」(紀尾井町)を指すが、日本のホテル界をリードしてきた存在といえる。このように高級ホテル=東京という図式は当然のようにも見えるが、再開発エリアの誕生に合わせるかのように、本格的に外資系が広がりを見せていったのもやはり東京であった。
1990年代に入り黒船襲来といわれ「フォーシーズンズホテル椿山荘東京」(目白/92年開業)、「パーク ハイアット 東京」(西新宿/94年開業)、「ウェスティンホテル東京」(恵比寿/94年開業)と、外資系チェーンの名を冠したホテルが次々と開業した。これらは御三家に対して「新御三家」と呼ばれた。
その後も外資系チェーンを冠したホテルが登場し続けた。2002年には「フォーシーズンズホテル丸の内 東京」(丸の内)、03年には「グランド ハイアット 東京」(六本木)、05年にはヒルトンの上級ブランドである「コンラッド東京」(汐留)と開業が続く。
さらに御三家・新御三家に続く「新々御三家」が誕生。「マンダリン オリエンタル 東京」(日本橋/05年開業)、「ザ・リッツカールトン 東京」(六本木/07年開業)、「ザ ペニンシュラ 東京」(銀座/07年開業)は“ホテル2007年問題”ともいわれ、既存ホテルへの脅威として捉えられた。
こうして、東京にはいわゆる外資チェーンの基幹的ブランドが出そろってきたわけだが、それまでにない個性的なブランドも誕生していく。“2014年問題”としてトピックになったことでも知られる、虎ノ門ヒルズの上層階に開業した「アンダーズ 東京」や大手町に開業した「アマン東京」など、これまで日本にはなかったコンセプト性の高い外資ブランドである。
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