クルマはどう進化する? 新車から読み解く業界動向

トヨタのいう「原価低減」とは「値切る話」ではない 部品不足と価格高騰池田直渡「週刊モータージャーナル」(7/7 ページ)

» 2022年08月01日 07時00分 公開
[池田直渡ITmedia]
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トヨタはどんな活動をしているのか

 結局、調達回りの話を説明してくれる唯一の存在であるトヨタは、このところどんな活動をしているかを最後にまとめよう。

 まずは資材高騰についての対策だ。トヨタはサプライヤーと「市況変動ルール」を策定した。鉄・アルミ・銅・樹脂・ゴム・電池材料・レアアースについて、日経主要商品相場、London Metal Exchange、Plattsなどが報じるデータと照らし合わせて、仕入れ原価の値上がり分を自動的に100%反映するようにしたという。

 価格の反映は半年遅れ程度で、基本的にはTier1サプライヤーが対象である。公正取引委員会に下請法で怒られるので、直接介入できないTier1から先は、お願いベースでTier1に面倒を見てもらう形になっている。

 また市況指標がない電力やガスなどのエネルギーについては、効果的かつ現実的な対応方法を検討中だ。

 全体としては、差し迫った緊急の問題を一時的に回避するために、原材料価格などのリスクの回避方法がないサプライヤーに対して、原則的にトヨタが値上がり分を負担するという話だ。

 今のところ、原材料価格の急騰に対して、サプライヤーに対して救済策を出したと発表したのはトヨタだけになる。他社が水面下で同様の手を打っているのかいないのかは、発表がないし、説明する文化がないので何ともいえない。しかし本当は自動車産業全体の問題として取り組むべき大きな課題だと思う。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミュニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 以後、編集プロダクション、グラニテを設立し、クルマのメカニズムと開発思想や社会情勢の結びつきに着目して執筆活動を行う他、YouTubeチャンネル「全部クルマのハナシ」を運営。コメント欄やSNSなどで見かけた気に入った質問には、noteで回答も行っている。


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