三菱UFJ銀行とマネーフォワードが合弁で設立した「Biz Forward」。2021年8月2日の設立から1年が経ち、主力事業の1つであるファクタリングサービス「SHIKIN+」の事業開発が加速してきた。
8月8日には、顧客の銀行口座と連携し、入出金明細データをシステムから取得できる機能の提供を開始した。これまで必要だった、通帳画像データなどのアップロードが不要になり、与信審査のスピードが増す。マネーフォワードの口座連携技術を活用することで、利便性を向上させる狙いだ。
「銀行ができてこなかったサービスをやりたい」と、Biz Forwardの林博之副社長は「SHIKIN+」について話す。
林氏は三菱UFJ銀行出身。銀行では、中小企業のファイナンスになかなか取り組めていないという問題意識があったという。売掛金(売掛債権)を買い取るファクタリングは、中小企業にとって運転資金調達の重要な手段だ。しかし、銀行では中小企業向けのファクタリングはほとんど提供されていない。
「ファクタリングは貸金業ではない。銀行の中でやると制限が出てしまう」と林氏。銀行が融資をいったん断った顧客に対しても提供できるサービスであるため、銀行のやり方を否定することにもつながってしまうからだ。
現状、企業経営者にとってファクタリングは最後の手段に当たる。銀行に融資を依頼し、それが実現できなかったときに慌ててファクタリング業者を探す。資金が必要なタイミングギリギリになってしまうために、スピードが求められ、かつ高い手数料が常態化していた。
ファクタリングは、売掛債権の買い取りであるため、貸金業法や利息制限法などの適用を受けない。そのため、年利に換算すると暴利ともいえる手数料を取る業者も多かった。例えば3カ月後に支払われる売掛債権買い取り手数料が10%の場合でも、年利に換算すると40%に当たる。
こうした構造を変えていくのが、Biz Forwardの目標でもある。「中小企業の短期運転資金について、金融機関の融資はいき渡っていない。この補完的な資金調達手段には社会的な意義がある。オンラインファクタリングの事業者は増えてきているが、既存ファクタリングとは一線を画すものだと伝えて、需要を埋めていきたい」。SHIKIN+を担当する、マネーフォワード出身のファイナンス事業本部副本部長プロダクトマネージャー 山本隆弘氏は、こう思いを話す。
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