HRBPとは「Human Resources Business Partner」の略称で、「事業戦略を実現するために、人事面で部門をサポートする役割」と定義されます。1990年代にアメリカのデイビッド・ウルリッチ氏が提唱しました。
HRBPは日常的に担当の部門長とやりとりし、経営戦略や部門戦略実現における人材に関する課題の調査や提案、各施策の実施などの役割を担います。業務量が多いため、通常はHRBPの専門チームや担当者が設けられます。チームメンバーや担当者は、主に各部門長に対して人事面でのコンサルティングを実施します。
HRBPの役割の一つとして、現場部門長や配下の従業員と共同で、その部門で求められる人材の定義を行う、というものがあります。ここで、ある日本企業A社が特定のポジションについて人材の定義を行った実際の事例を見てみましょう。
3種類のサービス
これまでは、サービスごとに所管部門が存在し、各部門が個別に顧客に対して提供していた。
同じ顧客にあるサービスを提供した後に、別の部門が別のサービスを提供することもあった。
今後、3種類のサービスを統合したソリューションを提供する事業方針が立った。統合ソリューションを取り扱う営業チームにアサインする人を決め、今後の営業員の育成方針も作ることを目的に新チームに必要な人材定義を行った。
A社では長年各サービスが独立して注文を受けていましたが、次第に顧客側が複数のサービスをまとめて要望するようになりました。
そのため、事業戦略上、3種類のサービスのシナジーを出すことを重視し、統合して提供できる体制を組むことになり、まずはフロントである営業部門にその役割を持つ専任チームを置くことが決まりました。
まず、専任チームには誰がふさわしいのかを決める必要があります。さらに、今後営業職の多くが専任チームにふさわしい人材になるには、誰をどのように育てるべきか、人材開発方針を決定する必要もあります。
現場部門だけでは手に負えないため、人事部で初めて専任のHRBPを置き、下図のように営業部門長と共に営業人材の定義付けに着手しました。
まずは、新しく必要になる営業の仕事に精通しているのは営業部門長であるため、営業部門長を主体に新しい仕事や能力を定義しました。
能力を定義した後は、各従業員のアセスメント実施が必要になります。HRBPはアセスメント実施を見据え、仕事要件、経験要件、能力要件など、書き下しの粒度を意識しながら営業部門長をフォローしました。
特に経験や能力は、従業員が申請しそれぞれの上長や部門長が承認する形式をとることを想定したため、申請時や承認時に極力曖昧な判断が下されないような基準にすることを意識したそうです。
また、最初から必要な能力を決定するのではなく、必要な能力を仮決めした後、まずチーム員を選抜し、そのチーム員を参考に、あらためてそのチームに必要な条件を決定するというステップが必要とHRBPは考えました。
このようなことを意識しながら、HRBPは部門長と上図の各Stepを進めていきました。
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