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優秀な人を欲しがる現場、見つけられずに悩む人事──「中途採用の壁」を壊すため、何をしたのか狙うは引く手あまたのDX人材(1/4 ページ)

» 2022年07月12日 13時30分 公開
[渡辺まりかITmedia]

 現代の企業に求められる役割は、ただ商品やサービスを提供することだけではない。脱炭素化やSDGsなど、社会的責任も大きい。もちろん、利益を出さなければ企業として存続できない。コストを削減しつつ生産性を上げるためのカギを握るのが業務のDX化だ。しかしながら、各社がこぞってDX人材を求めるため、採用しづらい状況がある。

 そのような中、ダイレクトリクルーティングに取り組むことでキャリア採用(中途採用)に成功している企業がある。東洋エンジニアリングだ。同社がDX人材の採用に注力し始めた頃は、部門の要求が高く、マッチする人材がそもそも見つからないという課題が立ちはだかっていた。

 一種の「採用あるある」といえる課題だが、同社ではある取り組みによって対応したという。開始から「半年間、成果なし」だった市場価値の高い人材の採用を、軌道に乗せられた訳とは。経営管理本部 人事部の佐藤薫氏と、同人事部 リクルーティングチーム キャリア採用セクションリーダーの矢島千明氏に話を聞いた。

「半年間、成果なし」だった状況を変えた取り組みとは

 1961年創業の東洋エンジニアリングは、長年“エンジニアリング”を核とした事業――肥料(アンモニア・尿素)、石油化学、石油・ガス、発電などさまざまなプラントの研究や開発協力、設計、建設、技術指導などを展開している。

 そのため、キャリア採用する場合でもプラントエンジニアリング経験者をメインに、エージェントを通じて採用してきた。退職者が出た部署の人員補充が主だったが、採用の必要性に変化が出てきた。

 「2009年に、持続可能な社会への貢献を重視したMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)、20年にはマテリアリティを制定。25年までの中期経営計画のグリーン戦略とブルー戦略で、よりアクセルを踏んでいく必要が出てきた」と佐藤氏。

 「グリーン戦略は、これまで培ってきた知見・経験・技術を活用してカーボンニュートラル分野を中心に新技術・事業開拓を進めていくこと、ブルー戦略ではEPC(設計・調達・建設試運転。プラント事業などを一気通貫で引き受けること)において、海外拠点を中心としたグループオペレーションを進め、業務改革とDX活用を通して生産性を向上させ、より競争力のある商品を提供する。どちらにとってもDXが重要な部分を担っており、それは今まで社内にいないタイプの人材を採用しなければならないことを意味しています」

photo 経営管理本部 人事部 佐藤薫氏

 そこで目をつけたのが「たまたま世の中で盛り上がってきていた」(佐藤氏)ダイレクトリクルーティングという手法だ。エンジニアリングの経験がなくても、転職希望者の職務経歴書をチェックして、人材を必要としている部門から求められている要件とマッチしていれば、自分から声をかけることができる。

 「ダイレクトリクルーティングを試したいと提案したところ、面白そうなので挑戦する価値があるよね、ということで取り組めるようになりました」(佐藤氏)

 この方法がピッタリとハマり、20年度のキャリア採用40数人のうち、半数以上がダイレクトリクルーティングによる採用となったのだ。

しかし、この成功の裏には、さまざまな解決すべき課題があったという。

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