最後に、HRBPを導入する際の3つのポイントをご紹介します。
本記事ではHRBPの仕事・役割の一つとして「人材の定義」を挙げました。しかし、HRBPの業務は人材の定義では終わりません。人材の定義をしたら、どの程度の数の従業員を育成していくのかを決め、配置、アサイン、研修などそれぞれの方法で人材開発計画を立て、実施する必要があります。
HRBPだけで行う仕事ではないものの、HRBPが率先して部門、人事部の関係者と協力しながら進める必要があるため、その業務難易度は高く、業務量も多くなります。そのため、基本的には専任のHRBPチームを置くことが理想といえるでしょう。
昨今HRBPへの注目が高まり、HRBPを導入する事例が増えてきました。その中で、人事部内だけでHRBPを導入することを決定した場合に、HRBPの最初の仕事を「現場部門の課題や要望を知る」と設定するケースが多く見受けられます。
しかし、現場部門の人材に関する課題や要望は山ほどあることが通常なため、仮説なしで課題をヒアリングすると収拾がつかなくなります。
その後、数ある課題の中から着手できそうなものを決めて現場部門へ提案する必要がありますが、何度も却下されたり、そもそも1つ目の現場部門への提案に時間がかかり前に進めなかったり、といった事態になりかねません。そのため、HRBPを立ち上げた後スムーズに仕事を進めるためには、下記のポイントを押さえておきましょう。
上記を実行すれば、提案が少々外れていたとしても、HRBPがどういうサービスを提供するのか、現場部門長が提案時点から理解することができます。そのため、ただヒアリングするよりも意味のある課題共有ができるようになり、結果としてHRBP導入後のスムーズな前進につながるでしょう。
HRBPは、何より現場部門の協力がないと実現できません。そのためには現場部門に対してメリットを提示する必要があります。それを最低限クリアする条件が上記の2ですが、より効果的な方法は、「現時点ではまだ起きていないが、これから起きる変化」をきっかけに、困るであろう現場部門と一緒にHRBPを立ち上げることです。
例えば先述した事例では、中期経営計画に基づいて営業部門が新しいチームを立ち上げる際に、新チーム結成に困っている営業部門を助ける形でHRBPが立ち上がりました。
きっかけは中期経営計画以外にも、さまざまな場面から察知できます。例えば、ある部門が経営会議で新しいことにコミットしたときや退職者が増えているとき、エンゲージメントサーベイの結果が悪いときなどが考えられます。
このような状況に置かれている部門は何かしら新しい悩みが発生しているため、そこに対する仮説を持って提案することで、現場部門もHRBPのメリットを認識しやすくなります。
これまで日本企業の現場部門においてHRBPという存在は当たり前のものではなく、現場部門側にその存在を知る人は少なかったでしょう。そのため、現場部門へ必要性が伝わりやすいタイミングをきっかけに人事部門からHRBPの提案をするという形は、日本企業において一つの成功しやすいパターンだと考えられます。
戦略人事の目的は「経営戦略の実現」ですが、それを実施するための手法や留意すべきテーマは多岐にわたるため、結局何をすればいいのか分からないと感じる方が多いようです。
本記事では戦略人事の一歩目は経営戦略や事業戦略を実現するための「人材の定義」とし、それらを実践する際に有用なHRBPという役割、HRBPの導入ポイントについて整理しました。戦略人事の実現の一助となれれば幸いです。
奈良和正 株式会社Works Human Intelligence WHI総研
2016年にWorks Human Intelligenceの前身であるワークスアプリケーションズ入社後、首都圏を中心に業種業界を問わず100以上の大手企業の人事システム提案を行う。
現在は、タレントマネジメント、戦略人事における業務実態の分析・ノウハウ提供に従事している。
大手法人向け統合人事システム「COMPANY」の開発・販売・サポートの他、HR 関連サービスの提供を行う。COMPANYは、人事管理、給与計算、勤怠管理、タレントマネジメント等人事にまつわる業務領域を広くカバー。約1200法人グループへの導入実績を持つ。
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