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「課長にすらなれない」──絶望する40代社員が増えるワケ河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)

» 2022年08月26日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]

10年前から危惧されていた問題

 管理職ポストの削減で生じる問題は、すでに10年前から懸念されていました。

 2011年に連合が、大卒の50〜54歳男性で、係長・課長・部長などの役職についていない人の割合を取りまとめました。すると、1985年では19.9%でしたが、02年には32.0%になり、09年には35.9%まで増加していました(日本労働組合総連合「役職別の人員構成と賃金」2011年版)。

50〜54歳の非役職者(赤色)の割合が増加(日本労働組合総連合「役職別の人員構成と賃金」2011年版)

 同様の結果は、13年に厚労省が行った調査でも示されています。4年制大学を卒業した50〜54歳の男性社員のうち、課長や部長といった管理職に就いていない人は55%と半数を超え、20年前に比べると8.9ポイント増加。さらに、16年の厚労省の調査では、企業の規模に関係なく「課長は40代後半」「部長は50代前半」が最も多いことが分かっています。

 大雑把に捉えると、16年の時点で「課長昇進のリミットは40代後半」だった。ということは、40代前半の黒田さんは、よほどの玉突き人事でも起きない限り「課長昇進はムリ……」と言わざるを得ません。

「課長になれない人」を悩ませる賃金格差

 気になるのは、ヒラと課長の賃金格差です。

 件の連合の調査によれば、00年頃からまず部長級の賃金が上昇し始め、04年頃からは課長賃金が上昇。非管理職との格差は08年までに広がり、その後は横ばいで推移。報告書ではこれらの実情を受けて、「近年、新自由主義の風潮のもと、上場企業の役員報酬が急上昇し始めて、まず上場企業役員の報酬が上昇し、それに引きずられるように部長級が上昇を始め、それを追って課長級が上昇した」との見解が示されていました。

 さらに非役職者の平均賃金は月27.7万円(40.7歳)、課長級だと47.6万円(48.7歳)、部長級は57.7万円(52.8歳)。ヒラと部長級とでは、月収だけで30万円もの格差が存在するのです(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」、2021年)。

【編集履歴:2022年8月26日午後11時45分 記事初出時、平均賃金の数値に誤りがあったため変更いたしました】

「賃金構造基本統計調査」2021年、厚生労働省より

 そもそも日本の働く人たちの賃金は、20年以上上がっていませんし、中間層の没落も深刻です。

 管理職になれるかどうかは、出世とか、肩書きとか、社会的地位といった「権力の獲得」を意味するものから「生活できるどうか」の問題になっている。どんなに課長や部長たちが、心身を酷使して働かせられている現実を目の当たりにしても「背に腹は変えられない」ということなのでしょう。

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