台湾の有力スタートアップがいま、日本を目指す3つの理由なぜ中国ではないのか(2/3 ページ)

» 2022年09月11日 07時30分 公開
[濱川太一ITmedia]

元グーグル技術者の程氏「日本の商習慣を学びたい」

 程氏は、留学先の米スタンフォード大学でコンピューターサイエンスの学位を取得。卒業後、2007年に米グーグルに入社し5年間、ソフトウェアのエンジニアとして従事した。

 その後、11年に台北でiKalaを設立。カラオケ好きが高じて、当初はオンライン・カラオケサービスとして創業し、その後、AIを活用したマーケティング支援事業に転換した。

 創業から10年目にしての日本進出。程氏はその最適なタイミングを見計らってきたという。もともと、程氏の母方の祖父が日本企業の台湾代理店で代表を務めていた経緯もあり、程氏は幼少期から日本の文化に馴染みのある環境で育ってきたという。

 「日本は信用を重んじる商習慣が根付いている。一度信頼を失えばマーケットに二度と受け入れられない。技術的にも成熟した今のわれわれのサービスなら受け入れてもらえるだろうと考えた」(程氏)

スタートアップサミットのピッチイベントで自社を紹介する程世嘉CEO(筆者撮影)

 技術的にも自信を得られたタイミングで、日本のDX機運も高まってきた。21年10月のデジタル庁発足に加え、岸田首相は22年を「スタートアップ創出元年」と位置づけ、今後5年で投資額を10倍に増やす「スタートアップ育成5か年計画」策定へと動き出している。

 程氏は「日本人は一歩一歩、足元を確かめながら慎重に仕事を進めていく。今はそんな日本の商習慣を学ぶ絶好の機会だ」と意気込む。

中国進出「開発コストが大きく」

 迷惑電話や詐欺SMSを防ぐスマートフォンアプリ「Whoscall(フーズコール)」を2010年から展開する台湾のスタートアップ「ゴーゴールック(Gogolook)」は20年11月、福岡市に日本法人を設立し、日本に進出した(関連記事)。

 同社は台湾をはじめ、韓国や香港、タイなど東アジアを中心に16億件以上の電話番号情報のデータベースを構築している。これにAI技術を掛け合わせ、詐欺などにつながる不審な着信の識別や、不要な着信・SMSを自動ブロックするサービスを手掛けている。

「総統イノベーション賞」を授与されるGogolook創業者の郭建甫CEO(同社提供)

 21年11月には世界ダウンロード数が1億を超え、台湾の経済部(日本の経済産業省に相当)が創設した「総統イノベーション賞」を受賞した実績も持つ。

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