低すぎる日本企業のDX成功率 DX迷子に陥る3つの要因DXの本当の進め方(前編)(4/4 ページ)

» 2022年10月03日 07時30分 公開
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手段が目的化していないか?

 経済産業省はデジタルガバナンス・コード2.0(旧DX推進ガイドライン)にて、DXを以下のように定義している。

「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズをもとに、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」(出典:出典:経済産業省「デジタルガバナンス・コード2.0」R.4 9月改訂)

 自然界における生物の進化に例えるならば、DXとは「激変する環境下における、生き残りを賭けた変異と適応」であり、うまく乗り切れなかった生物には種の絶滅が待っていると言える。

 生き残るために競争優位性を獲得することがDXの主目的であり、”変革”はその手段にすぎないのだ。手段と目的は連綿とつながる関係にあるものの、その位置関係を見誤らないことが重要である(図3)。

DXにおける手段と目的の関係性(画像:筆者作成)

DXを正しく理解したその先

 DXの本当の進め方(前編)では、日本企業のDXの現状に触れ、DXが進まない3つの理由を解説した。特に、「手段と目的の位置関係の整理」として解説したように、DXに対する理解の不正確さは多くの企業が今まさに直面している課題である。

 本稿をここまでお読みいただいた読者の皆さまには、自社がどのようにDXを位置づけているかをあらためて確認してもらいたい。経営のトップ層から現場に至るまで同じ理解を持って取り組めているだろうか。

 DXは「誰のため」「何のため」なのかを確認しあってみてほしい。理解度の差や解釈のズレを感じることになるだろうが、心配はいらない。差がある、ズレがあることが問題なのではなく、それを認識していないことが問題だからだ。問題を認識しさえすれば、解決に向けて進み始めることができる。

 次回(後編)は実践編としてDXの本当の進め方について、事例を交えつつ解説していく。本稿を通じて企業のDXが少しでも加速すれば幸いである。

著者紹介:林大介(ハヤシダイスケ)

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EYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社 カスタマーエクスペリエンス・トランスフォーメーション シニアマネージャー。電機メーカーのエンジニア、通信システムインテグレーターのセールスを経てコンサルティングの道へ。技術トレンドを背景にしたデジタルトランスフォーメーション、新規事業創造、ワークスタイル変革、地方創生プロジェクトなどに注力。デジタル戦略策定、変革実行支援、ワークショップの企画と開催、サービス企画のディレクションに強みを持ち、デザインシンキングを用いた創造的なプロジェクトも手がける。


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