長引くコロナ禍の影響は、人々の生活様式を変貌させた。それはビジネスパーソンの働き方もしかり。「働く場所=会社のオフィス」が当たり前だった世界は消え、テレワークが浸透した現代では、オフィスだけでなく自宅、コワーキングスペース、シェアオフィス、カフェに至るまで“働く場”は多様化している。
この連載では、“働く場”の再定義が余儀なくされた現代において会社がどう対応するべきか。先進的な取り組みを行う企業を紹介していく。
サントリーグループが2021年2月に移転した田町オフィス(東京都港区・芝浦)は、テレワークが普及した今だからこそ、“リアル”の場を大切にしている。人の交流から新たなイノベーションが生まれると考え、集まれる場を意識したという。同グループのDNAである「やってみなはれ」精神が浸透するオフィスとはどのような場所なのだろうか。
田町オフィスは、20年7月に竣工した36階建ての田町ステーションタワーNの4〜11階にある。もともとサントリーグループは、酒類/飲料の営業部署が東京・赤坂、飲料事業会社が東京・京橋、そして酒類事業会社は東京・台場と、部門ごとに別れていた。
それを今回「首都圏再編プロジェクト」として、田町オフィスと東京・台場の「サントリーワールドヘッドクオーターズ」の2拠点へと再編。田町オフィスには、各社の事業機能を集約した。
オフィス移転を担当したサントリービジネスシステムの鈴木聡子氏は、「再編にあたり大事にしたのは、大家族のような一体感です。都内3カ所に分かれていた事業拠点を統合・整理し、事業会社同士のアイデアを掛け合わせることで新たなシナジーが生まれないかと考えました」と移転の理由を明かす。
田町オフィスのコンセプトは「商店街」。各事業会社をひとつの商店と捉え、それらが集まる「サントリー」という商店街を目指した。もともと「赤玉ポートワイン」などを販売する鳥井商店から始まった同グループ。その後、食品、ビール、スピリッツ、健康食品など多様な商品を販売するに至り、09年にホールディングス化。各事業を成長させてきたが、鈴木氏は「ここにきて、さらなる成長を目指す時期にきた」と強調する。
「ホールディングス体制に変わり、各事業の成長を目指すフェーズがありましたが、現在はその成長局面が変わってきたなと感じています。例えば、ノンアルコール製品を作るにしても、清涼飲料側、酒類側で着想するものが大きく変わってきます。新オフィスには、事業会社の垣根を越えて異なる考えやアイデアをクロスさせ、新たな価値を創造できる仕組みを求めました」(鈴木氏)
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