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「お互いうまくやろうぜ」パワハラを助長する同僚──日本特有の「いじめ構造」の闇河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(4/4 ページ)

» 2022年10月14日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]
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パワハラ防止策が「無意味」になる理由

 「さわらぬ神にたたりなし」という言葉があるように、いじめを目撃しても「自分には関係ない」と放置したり、遠くから乾いた笑いを浮かべながら見守ったり。あるいは、「倫理委員会に報告したら、報復措置をとられるかもしれない」と考えたり。

 そんな見て見ぬふりをする同僚たちの行動が、いじめられている人をさらに追い詰める。誰にも言えなくなる。逃げる気力ない。そして、傍観者は傍観者にさらに徹していくのです。

傍観者が事態を悪化させることも(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 パワハラ防止法が中小企業にも適用されて半年がたち、相談窓口を設置したり、社内コンプライアンスを徹底する企業も増えてきました。

 しかし、どんな制度も仕組みも、「その場」にいる人たちが、どう行動するか? で、無意味な制度に成り下がります。

 とりわけ今のようにギスギスとした社会では、誰もがパワハラの加害者になるリスクも、被害者になるリスクもあります。そのリスクを下げるためにも、「自分ははやし立てる人になっていないか?」「私は傍観者になっていないか?」と自問することを、忘れないでほしいです。

 だって、誰もが、家に帰れば自慢の娘であり、息子であり、尊敬されるべきお父さんであり、お母さんなのですから。

河合薫氏のプロフィール:

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 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。

 研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)がある。


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