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GMOの根幹にある「55カ年計画」とは? 安田CFOが明かす、市場や売上起点ではない経営対談企画「CFOの意思」(2/2 ページ)

» 2022年10月28日 16時30分 公開
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キャリアパスは考えない 自分は会社の一役割

嶺井: 安田さんは個人として、今後どのようなチャレンジをしていこうと考えていますか。

安田: 「成長が全てを癒やす」という考えを持っているので、会社も自分自身もいかに成長し続けるかを考えていきたいですね。インターネット産業に巡り合い、そこに飛び込んだからこそ、今こういう立場で仕事させてもらっている。これは非常に幸せなことです。

 そしてこの20年間、ずっと会社の成長のためにできることを考え続けていた。自分は、会社の中で、一(いち)機能、一役割を担っているに過ぎません。会社の中で成長することで、ステークホルダーがハッピーになれるよう、役割を担い続けていきたい。必要でないなら、今の立場にこだわらず、別の役割を考える、というスタンスを持っています。

嶺井: 自分のキャリア形成というより、会社の成長のためにこれまでも自分が必要とされる役割を担ってきたし、今後も必要とされる限り、それを担い続けていくと。

安田: そうですね。逆に自分のキャリアパスについては考えないようにしています。

嶺井: 2000年の転職タイミングでは、自分のキャリアパスについて考えていたはずですが、いつからそのような考えにシフトしたのでしょうか。入社直後ですか。

安田: 入社した28歳の頃は、「この会社には35歳ぐらいまではいるのかな」というイメージしか持っていなかったので、22年もここにいるのが不思議なくらいですね。しかも、独立志向が強かったわけですし。

 ただ、00年3月に初めて熊谷に会った後、お礼メールを送ったら「夢があるところに行動がある。行動は習慣を作り、習慣は人格を作り、人格は運命を作る」という座右の銘を送り返してくれました。

 ボスである熊谷のことは尊敬しています。今でも経営以外でも、パイロットとして飛行機を操縦したり、クラブDJをしたりするなど、常にチャレンジを続ける、まさにサミュエル・ウルマンの『青春』という詩を体現している人で、大きな影響も受けました。だから22年間も一緒に仕事をしているのではないかなと思います。

自分のハードウェアをメンテする

嶺井: 安田さんは、どういう方がCFOに向いていると思いますか。

安田: CFOに限らず、ポジティブシンキングでいられることは大切ですね。

嶺井: これだけの危機を乗り越えた安田さんに言われると、「その通りだな」と思ってしまいます(笑)。

photo グロース・キャピタルの嶺井政人CEO

安田: ベンチャーのCFOは、ポジティブに変化を楽しむ必要があります。それからやり抜く力を持っていることですね。そういう素養の上に、ファイナンスや会計、会社法といった専門知識を身に付けていただければいいかと思います。

嶺井: ベースはポジティブシンキングとやり抜く力なんですね。

安田: もちろん、渦中にいると、「変化を楽しむ」と言っている僕も結構しんどいこともありましたし、金融危機のときはそういう日が続いていました。熊谷はもっときつかったと思いますけど。

 実は、ちょうど一番つらかった頃、料理を趣味としていました。角煮を作ったり、鶏ガラをゆがいていたりして。すると過払いの引き当てがどうなったかなど、仕事のことを忘れられる。そういうふうに、思考を解放できる機会を持つのは大切かもしれませんね。

嶺井: 毎朝泳いでいることは、ポジティブシンキングと関係していますか?

安田: 金融危機を乗り越えて、組織が大きくなってきた11年10月頃から始めた水泳のことですね。この年に娘が小学校に入学し、学校まで送る関係で、早起きするようになりました。始めの頃は、そのまま会社に直行し、仕事をしていましたが、ある日プールで泳いでみたら、「これは素晴らしい。毎日来てみよう」と思ったんです。それで、毎日泳ぐことを目標にしていたら、いつのまにかクロールで1キロ泳ぐようになり、それが高じて、走るようになり、今では実業団陸上部の長までやっているという。そんなオチです。

 ただ、自分の体、ハードウェアをきちっとメンテすることで、ポジティブなエネルギーを出すことができる。そう考えるようになりましたね。実際、この10年間、マネジメント面でポジティブさを出せるよう、助けられたのではないかと思います。

 熊谷は、確か20歳くらいから毎日筋トレして生命力をつけて、ポジティブさを獲得している。彼に追い付くのは難しいですが、毎日の運動習慣を怠らなければ、少しでも近づけるのではないかな、と考えています。

嶺井: CFOとして大切なベース、ポジティブシンキングとやり抜く力。それを体を動かすことで獲得されているんですね。

安田: 心と体が健康でないと、ポジティブシンキングになりませんよね。

嶺井: 最後に、今まさにCFOとしてチャレンジしている人や、これからCFOになりたいと目指している人へメッセージを頂けますか。

安田: 今、僕はCFOという役割で仕事をしていますが、そこにこだわらずに経営の当事者として何ができるかという見方をしてほしいなと思います。というのも、僕も最初は会計士として入社しましたが、「会計士でなければならない」と、自分で守備範囲を狭めてしまうことをせず、できることをしてきて、こういう立場にいます。守備範囲を決めてしまうと、会社の伸びしろも、自分の伸びしろも、自分で決め付けてしまうことになる。経営の当事者としてコミットし、その中にCFOがある、という気持ちが大切だと思います。

 それから、CFOという役割では、胆力を試される案件が多いのも事実ですので、ポジティブでいること、やり抜く力を持って頑張ってほしいですね。

 振り返ると、28歳(00年)から身を置いたのが、常に成長している会社で、成長している経営者とともに働くという環境でした。これは毎日1000本ノックをするような、アドレナリンが出まくっている状況です。この経験が、後になってとても役立ったと感じています。CFOを目指すのであれば、後々、どう生きるかを考えた会社選び、環境選びをしてほしいと思います。

 今日、何度も出てきた「チャレンジ」と「成長」という言葉。成長しているからこそチャレンジし続けられる、そんな会社を選んでもらいたいですね。

嶺井: すてきなメッセージをありがとうございました。



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