一方、医療サービスの利用状況についてはかなりの差があります。ざっくりといえば、月に1回以上、病院や診療所に行く人の割合は、日本が6割、米国は2割、ドイツが3割、スウェーデンは1割ということになります。
その分、他の国よりも日本の高齢者が健康だというなら分かりますが、健康状態は各国でそう変わりません。ということは、高齢者の健康と、医療サービスはそんなに関係がないのではないかと思えてきます。病院の数や行く回数を減らしたら健康が損なわれるかというと、他の国を見ればそうとは言えません。
このことは、北海道夕張市の事例が分かりやすいでしょう。財政破綻した夕張市では、ベッド数が171床あった市立病院が19床の市立診療所に縮小され、医療サービスが“崩壊”とも言えそうな事態になりましたが、がん、心臓病、肺炎で亡くなる人が減り、1人当たりの年間医療費も80万円から70万円へと減ったといいます。
もちろん、医療サービスが減っただけでなく、そのような事態に対応した医師たちの工夫があったわけですが、いずれにしても、病院や診療所などがたくさんあることや、そこに頻繁に通えること自体が、健康にとって重要というわけではないということです。
以前から、「診療所が高齢者の集いの場のようになっている」「高齢者は病院に通い過ぎ」などの批判はありました。諸外国のデータと比較すれば、まさにそうだということになりそうですが、果たして、医療サービスを使い過ぎる高齢者を批判すべきなのでしょうか。筆者は、制度面や医療提供側の姿勢にも問題がかなりあるように感じます。
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