では、実際に導入した店舗ではどのような効果が出ているのだろうか。
まず、商品を眺めている顧客にタイムリーな接客を実施することで、購買につながるケースが増えているという。「この商品のことをもっと知りたいけど、近くに聞けそうな店員さんがいないから具体的な検討は後にしよう」というケースを一定数減らすことに役立っているようだ。
同社では、ECがリアル店舗の脅威になっていることを踏まえ、接客が必要な部門を強化している。具体的には、ベビーカーやランドセルなどについて専門知識を備えた従業員を増やすといった対応をしている。丹羽氏は「われわれの強みは、お客さまに商品を直接触っていただきながら、説明できることだ」と語る。
現在の課題は、売り場にいる顧客と従業員を完全に区別できていないことだ。あるエリアに一定数の人がいることが認識されたら、従業員に通知がいくようになっているという。
映像は、店内にある既存のカメラから取得しているのだが、必ずしも高性能なカメラばかりではないので、ハード面での限界がある。また、個人情報保護の観点から、従業員と顧客の顔は分析していない。顔以外の情報から顧客と従業員を見分けられるように精度を上げていこうとしている途中だ。
店内にはたくさんのカメラがあるが、全ての映像をリアルタイムで従業員がチェックできているわけではない。今後、AIカメラの精度がさらに上がれば、これまで従業員が見落としていた接客が必要な顧客をさらに把握できるようになる。
丹羽氏がカメラ映像を分析・検証し、驚いたことがあったという。これまで、平日夜のベビーカー売り場には顧客がほとんど来ないという思い込みがあった。しかし、丹羽氏が解析した映像には、仕事帰りと思われる共働き夫婦が、子どもと一緒にチャイルドシートを眺めている姿があったという。
「平日の夜にこんなお客さまがいらっしゃるのだという発見がありました。お客さまの行動を可視化することで、自分たちの思い込みや経験によるミスリードをなくしていきたいと考えています」(丹羽氏)
もし、平日の夜に一定数の顧客がチャイルドシートを見に来ていたのだとしたら、この時間帯に専門知識を持った従業員を配置することで、売り上げ増につながる可能性がある。
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