AIカメラにより、顧客が特に集まっているエリアを時間帯別で把握できるようになった。具体的には、利用率の高い場所を赤色、低い場所を青色にして、グラデーションで色分けする「ヒートマップ」で可視化している。同社では、このようにして集めたデータをどのように活用しているのか。
これまで、リアル店舗では利用客の数=レジで買い物をした人の数というのが基本だった。しかし、これでは家族連れと仕事帰りに立ち寄った会社員を同じ「1人」としてカウントしてしまう。現場で働いている従業員は「休日は家族連れが多い」「平日の夜は1人で来店するケースが多い」ということを何となく理解している。しかし、現場に出ることが比較的少ないマネジメント層は正確な実態を把握するのが難しかった。
実際にAIカメラで分析した結果について丹羽氏は「夕方に、想定していたよりたくさんのお客さまが来店しているのだが、売り上げには必ずしもつながっていないケースがあった。購入を促すために必要なのは接客なのか、リアルタイムの値引きなのかといったことを検証する必要があると分かった」と説明する。また、店内の客数を正確に把握することで、より具体的な根拠に基づいて従業員のシフトや売り場レイアウトを決められるようになると期待している。
量り売りの総菜を提供するコーナーでは、総菜に興味を示したのが子どもなのか、一緒にいる母親なのかといったことが識別できるようになった。総菜に限らず、個々の買い物がどのように行われているのか詳細が分かるようになったのも、AIカメラを導入した成果だ。
店内の人流解析をした結果、売り場により多くの顧客が入ってくるようになったケースもある。ある女性用の服売り場は、3つの通路に面していた。これまでは、「大手カフェチェーンの店舗に面している通路から売り場に入ってくる人が最も多いだろう」と想定し、その通路にマネキンを設置していた。しかし、AIカメラで分析すると、別の通路から売り場に入ってくる顧客が多かったことが判明した。そこで、レイアウトを実態に合わせて変更したところ、売り場に入ってくる人が10〜20%増えて、売り場内の回遊性が高まったという。従業員はそれぞれ自分の目に入るところでしか顧客の動向を見ていないが、AIカメラによって俯瞰的に流れを把握できるようになったのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング