コロナ禍で働き方の選択肢が大きく広がった。在宅勤務から徐々に出社に切り替える企業も出ているが、コロナ禍で定着したリモートワーク、コアタイムなしのフレックスタイム、フリーアドレス制など自由度の高い働き方の流れは元に戻らないと言い切る人事責任者も多い。
コロナ前の2018年6月からフリーアドレス化やコアなしフレックスタイム、利用制限のないリモートワークの導入を推進してきたUSEN-NEXT HDの住谷猛執行役員は「元に戻らない。なぜなら社員がリモートワークで仕事ができると分かったからだ」と語っている。
今年に入り、社員の居住先を問わない遠隔地での勤務や転居を伴う転勤を見直す動きも出てきている。NTTグループやヤフーが典型例だ。ヤフーは今年4月、午前11時までに所属先のオフィスに出社できる範囲に住むことを求める規則を撤廃。全社員が国内のどこでも自由に居住できる制度に変更した。通勤手段に飛行機での利用も認め、交通費も月15万円まで支給可とした。
大企業を中心に自由度の高い働き方が広がる一方で格差も発生している。日本テレワーク協会の担当者は「都市部と地方、大企業と中小企業でテレワーク利用の二極化が進んでいる」と指摘する。
東京都内でも二極化している。東京都産業労働局が調査した都内企業(従業員30人以上)の9月のテレワーク実施率は51.9%と約半数だ。従業員300人以上の実施率は85.1%、100〜299人は60.4%、30〜99人は40.1%。企業規模が小さいほど実施率が低い。一方、テレワークを実施している社員の割合は8月の39.2%から42.9%に伸びている。テレワークの実施回数は週3〜5日が48.4%を占める。週2日を含めると67.7%に上る。
もちろん、対面業務などテレワークが難しい仕事や業種もある。
中小企業で実施が進まない理由について、日本テレワーク協会の担当者は「ITに詳しい人が社内にいないことが大きなカベになっている。中小企業でもITに通じた人が主導し、トップを説得してテレワークだけではなく仕事の効率化を促進している企業もある。また、紙文化や決済の電子化の遅れも一因となっている」と指摘する。
テレワークに限らず、Web会議やワークフローなどのICTツールが導入されていない企業は、Z世代といわれる最近の学生が入社すると、時代遅れの仕事ぶりを見て愛想を尽かされる可能性もある。仕事の効率化や生産性の向上が進まないだけではない。自由度の高い働き方ができるかどうかは、人材の獲得にも大きな影響を与えつつある。
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