「プシュー」という音がするたびに、パンケーキの甘い香りが漂ってくる――。
焼き肉やウナギの店などで、人がたくさんいる方向に向けて換気扇を設置しているところがある。食欲をそそる香りが漂ってくるので、「あー、焼き肉を食べたいなあ」と思って、フラフラと店に入ってしまった人もいるはずである。
焼き肉店の場合、実際に肉を焼いて、その香りが店外に漂っているわけだが、人工的に香りをつくりだして、集客効果を高めようという動きがある。「Scenery Scent(シーナリーセント)」という会社が手がけていて、その装置の名は「Ambiscent(アンビセント)」。小さな瓶の中に香りが詰められていて、それを機械にセット。冒頭で紹介したように「プシュー」という音がするたびに、香りが漂うのだ。
アンビセントの仕組みはシンプルである。機材の中に人感センサーを搭載していて、近くを人が通ると、噴射孔から香りがでてくるというもの。香りはピンポイントに届くので、ちょっと離れた人が「パンケーキの香りがするなあ」と感じることはなく、また微細なミストなので、衣服などに香りが付くリスクも低いそうだ。
で、この装置を使って、どんなことに役立てようとしているのか。同社で社長を務めている郡香苗(こおり・かなえ)さんに聞いたところ「嗅覚を刺激することによって、集客力を高めたり、商品を印象づけたり、演出効果として期待しています」とのこと。
「ほんとかよ。香りを噴射するだけで、効果があるとは思えないね」と感じられたかもしれないが、Webメディアの「販促マップ」が都内のスーパーマーケットの特設カレーコーナーに、カレーの香りを出す機材(別のモノ)を設置して、どのくらいの人が購入したのかを調査した。
どのようなプロモーションをすれば、消費者はカレーを手にするのか。(1)販促ツールなし(2)デジタルサイネージを設置(3)デジタルサイネージとPOPを設置(4)デジタルサイネージと香りを噴射。この4つのパターンで検証したところ、最も多くの人が購入したのは「デジタルサイネージ+香り」だった。つまり、「買ってみようかな」と感じさせるには、目と鼻を刺激することが効果的であることが分かってきたのだ。
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