すき家の「深夜の自主トレ」は許されるのか 駐車場で店員2人が接客スピン経済の歩き方(2/5 ページ)

» 2022年12月06日 11時26分 公開
[窪田順生ITmedia]

「プロすぎる」「神の域」などと称賛

 これを受けてネットやSNSでは「応援」の声が圧倒的に多くなった。動画に登場した店の店内で、テキパキと動く店員の動画も拡散されて、「プロすぎる」「神の域」などと称賛されている。

 このように高いモチベーションでスキルアップを目指すアルバイトの方に対しては筆者も心から応援をする。報道によれば、自主トレをしていたアルバイト店員はすでに予選を突破し、次の北日本支社の大会を勝ち抜けば、全国大会にも出場できるというので、ぜひ特訓の成果を生かしていただきたいとも思う。

 ただ、だからと言って、この深夜の自主トレを「美談」ともてはやすようなムードには正直なところ、ちょっと違和感がある。

ねぎ玉牛丼
とろ〜り3種のチーズ牛丼

 報道によれば、この夜は気温4度で雪も降っていたという。そんな中で、いくら本人が希望をしたからといって、指導をする立場の社員がいたならば、屋外で半袖でトレーニングをさせるようなことはやめるべきではなかったか。また、営業時間中に駐車場でやることなのかという問題もある。実際に現場を撮影されて拡散され、TikTokでは多くの若者に真似されているし、ネット上で「パワハラか」などとあらぬ誤解も招いてしまっているからだ。

すき家の店員が自主トレ(出典:Wikipedia)

 このような社内の接客コンテストは、外食企業はよくやっていて、例えば有名なところでは、日本マクドナルドのALL JAPAN CREW CONTEST(AJCC)というものがある。これは1977年から開催している技能コンテストで、全国のクルーたちは日々スキルアップに励んでいる。だが、マックでは真冬の深夜、半袖姿のバイトが駐車場で配膳トレーニングをさせるようなことはない。

 一方、「すき家」ではバイトが自分で望めば、寒空の下で半袖トレーニングもさせる。「雪も降ってきたから店内でできることをやろう」と社員がいさめることもなかったということだ。つまり、店側がバイトのトレーニング環境にそこまで「配慮」をしていないということでもあるのだ。

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