嶺井: 入社直後はCOOで、CFOに変わり、直近ではCPOに役割が変化されました。それぞれ、どのような仕事をしてこられたのか、また役割変化の流れについて教えてください。
東後: Google時代の知見があったので、最初はオンラインマーケティングを打つところから始まりました。1年後にはインサイドセールスのための営業組織づくりやカスタマーサポートチームのスケールアップや強化など、プロダクトの数が増え、事業が拡大する中で新しい機能を会社に持たせたり、組織を作ったりという仕事を最初の5年間はしていました。創業間もないスタートアップでは、やることが多岐に渡りますが、私の場合も例に漏れずということですね。
人数が数百人規模になり、上場も見据えるようになった入社5年目。管理部門と攻めの事業をすべて自分が見ていたこともあり限界状態でしたし、ガバナンス的にも良くない。それで、CFOという機能を切り分けようという話になりました。
freeeでは事業にフォーカスしていたこともあり、事業側の組織には私より優秀な人材がたくさんいました。「これは、私がいなくても回るな」と感じ、自分は事業側から手を引き、管理部門を見ることにして、18年7月にCFOになりました。
CFOになってからは上場準備に入り、19年12月17日にマザーズへの上場。1年半ほどで上場できたことになります。
嶺井: あっという間の4年半ですね。
東後: そうですね。気づけばCFOになったタイミングから数倍の組織に成長し、上場企業としても数年経過したので、組織として大人になり、次のフェーズに組織として進められた4年半でした。
嶺井: そして、CPOに。
東後: これもCOOからCFOになったのと同じような流れです。管理部門や財務といったバックオフィス側に、私より専門性のある優秀な人材がたくさん存在するようになった。だから、そこの部門に関しては、もうお任せできるかなと。
ではなぜCPOなのかというと、ここ数年で立ち上げたプロダクトも多く、これから数年のプロダクト戦略が最も重要な要素の一つになっています。今年度から踏み込んだ投資をするという発表もしていますが、その最大の投資対象はプロダクトです。
CFOとしてコミットしている中で、このプロダクトを良いものにしたい、良いプロダクトを作っていくエグゼキューションに自分が携わりたい、それによってfreeeに貢献したい。それでCPOになった、というわけです。
嶺井: freeeの成長に必要なありとあらゆる部分を担ってこられたのですね。ポジションが変化する中、どのようにキャッチアップしてこられたのでしょうか。
東後: 高い専門性を持つ人だけがCFOになるわけではなく、専門性とは異なる強みを持つ人がCFOになってもいい、というロールモデルになれたらいいなと考え、COOからCFOになりました。そのため、これといったキャッチアップをしているというわけではなく……。
専門性の高いバックグラウンドのあるCFOだと、その分野での常識を持っていると思うんです。でも、その常識がないから「なんでこれはこうなっているの?」という素朴な疑問を持てる。それは一つの強みだと思っています。
例えば、グローバルIPOをしたことがありますが、その大変さを分かっていませんでした。そのため「やった方がいいならやろうよ」と言えました。もちろん、後々大変になってくるんですけど(笑)、最初に無知のスタンスから入っているからこそ、やり遂げられる。これはリーダーとして出せる付加価値なのではと思います。
嶺井: 確かに、専門性のある人であれば「当たり前」と思うところを、疑問を持ちつつ他の方法を探して進められるのは、東後さんの持つ強みかもしれませんね。
とはいえ、ある領域での業務を長く経験していたからこその勘所というのはあるのではないかと思います。事業経験が長いからCOOとして、ファイナンスや会計のバックグラウンドがあるからCFOとして、それぞれパフォーマンスが出せる、というように。そうしたバックグラウンドがない中で、パフォーマンスを出し続けられている秘訣は何でしょうか。
東後: freeeという組織、カルチャー、人、ビジネスへの勘所があるからではないでしょうか。例えば、突然、他の企業へ移ってCFOをしてくださいという話だったとすると多分できなかったと思います。
freeeの事業について知っているし、今いるメンバーも自分が採用してきたから、CPOやCFOとしての知識が足りなくても、freeeに貢献できているのではないでしょうか。
分からないながらも、役割を果たしていく中でいろいろなことが身についてくる。一緒に働いたり、教えてもらったり、話していく中で理解が深まる。それでも理解しきれないところは、専門性の高い人を採用して、その人を含めたチームにお任せする。いろんな人の知見をお借りしながら、必要なところを補完しつつ、それを武器としてやってこられたのではないかなと思います。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング