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「CxOの“x”の中身なんてどれでもいい」 COO→CFO→CPOを経たfreee東後氏がそう語る真意対談企画「CFOの意思」(1/3 ページ)

» 2022年12月13日 05時00分 公開

連載:対談企画「CFOの意思」

 ベンチャーの成長のカギを握る存在、CFO(最高財務責任者)。この連載では、上場後のスタートアップの資金調達や成長支援を行うグロース・キャピタルの嶺井政人CEOが、現在活躍するCFOと対談。キャリアの壁の乗り越え方や、CFOに求められることを探る。

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 前編に引き続き、「CFOの意思」今回の対談相手は、freeeでCPOを務める東後澄人氏。COOとして同社に参画し、CFOを経て現在はCPOという異色の経歴は、なぜできあがったのか。経営者としての役割変更とともに、どんな変化があったのか? 東後氏が考える「CxOの条件」とは?

COO→CFO→CPO 異色の経歴は、なぜできあがった?

嶺井: 東後さんご自身の経歴上の強みや弱みについて教えてください。COO、CFO、CPOと、ここまで多くのCxOの役割を経験する方は希少ですよね。

東後: 一つ一つに深く入り込まない、詳細が分かっていないからこそフラットに全体を見渡せるというのが、強みではないかなと思います。どの領域に対しても、高い専門性がないので、多角的な視点を持てる。これは経営者の一員としての強みではないかと思います。

 また、いろいろな経験を持っていることで他の人にはない独自のキャリアを持てているというのも、強みですね。弱みは明白で、何も専門性がないことです(笑)。

嶺井: そんなことはないと思いますよ!

東後: CFOたちの会合に行くと、専門性の高い話題にはついていけないと思うことがありますから。

マッキンゼー→Googleから、なぜ「売上ゼロ」のfreeeへ?

 東後氏が大学院を修了し、McKinsey(マッキンゼー)に入社したのは2005年のこと。5年間、経営コンサルティングとして製造業やIT業界に関係するプロジェクトなどを担当した。

 10年にGoogleに転職する際に面接官を務めていたのが、現在はfreeeのCEOである佐々木大輔氏だった。入社後の一時期は、2人だけの日本のチームでスモールビジネス向けのマーケティングをしていたこともあるという。3年間ほど共に働いていたが、佐々木氏は退職し起業。東後氏は約1年後に合流した。

嶺井: freeeは12年7月設立で、東後さんがジョインされたのが13年7月。すぐに入られたのですね。

東後: 最初のプロダクトである「クラウド会計ソフトfreee」のローンチが13年3月で、私の誕生日と同じ。それもあり、久しぶりに佐々木とチャットしたんです。何度か話していく中で、これから本格的に課金に踏み切り、事業化するとのことで、事業作り、組織作りの立ち上げ役ということで、COOとしてジョインすることになったんです。

嶺井: 東後さん自身、そろそろスタートアップへ転職したいと考えていらっしゃったんですか。

東後: 全く考えていませんでした。それこそ、佐々木が抜けた穴を埋めるために移ったGoogle Mapsのチームで2〜3年は少なくとも仕事をしようと考えていましたから。

 でも、佐々木がfreeeを立ち上げた際、「面白そうだな」と思っていましたし、何より彼と一緒に仕事をしたのが楽しかったので、彼から必要とされるのであれば、また一緒に仕事をしたいと考えていました。そういう意味で、良いチャンスかなと思い、freeeに入ることにしたんです。

嶺井: 外資系の大企業を渡り歩いていた東後さんが、よく少人数のスタートアップへの転職を決められましたよね。

東後: そうなんですよね。どちらかというと保守的なんですが。しかも、freeeは立ち上がったばかりで、メンバーの人数は少ないし、売り上げもゼロ。数カ月後の給料、大丈夫かな? という状態でした。とはいえ、市場はあるし、うまくいくイメージしか持っていなかったです。

嶺井: 大きなビジネスチャンスがあるという確信があった。

東後: そこまでの根拠があったわけではありません。ただ、Google時代、オンライン広告で集客しましょうというGoogle AdWordsのマーケティング業務を行っていました。そのためスモールビジネスを営んでいる方と直接お話する機会を得ていましたが、皆さん、集客したいのはやまやまだけど、そこまで手が回らないというご苦労をされていることを知りました。

 (受発注のための)FAX処理に時間がかかる、確定申告時には1週間ほどお店を閉じないと時間が取れないなど。スモールビジネスでは、バックオフィス業務も自分たちでやらなければいけないので、オンライン集客以前の、ベーシックな業務で困っていたんですよね。そういう事実を目にしてきたので、良いプロダクトがあれば、使っていただくチャンスはあるのではないかなと。

嶺井: 佐々木さんと働きたい、スモールビジネスの困りごとを知っているからこそ、ビジネスチャンスがある、という確信。そしてfreeeへの入社を決められたということですね。

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