一見すると、通常のホテルのように思えるが、国内外ではそのクオリティを酷評する意見が絶えなかった。実際に宿泊した観戦客はどう思っていたのか。日本人サポーターに聞くと批判の嵐となった。
愛知県在住で、元中学校教員だという60代男性は「自分は1人で宿泊したが、2人部屋にしては狭い」と率直な感想を述べた。2002年の日韓大会以降、10年南アフリカ大会を除く過去4大会を観戦した経験から「このクオリティで1泊3万円は高い。ブラジルで同じ価格帯のホテルならプール付きの部屋に宿泊できた。日本で1万円だとしても苦情が来るだろう」と話す。
貨物コンテナを活用していることから壁が薄く、近くにある発電機から発せられる大きな騒音にも悩まされたいう。多くの不満はあったものの「チェックイン時に現地で多くの人に助けてもらった」とも明かし「4年後は妻が定年退職し、年金生活になっているので次の大会は夫婦で現地観戦したい」と笑顔を見せた。
別の日本人宿泊者にも話を聞いた。1994年米国大会から現地観戦しているという東京都内在住の60代と50代の男性2人組は「過去の大会では1泊1万円以内を基準に宿を選んでいた。3万円払ってこのクオリティは考えられない。完全にぼったくり」と語気を強めた。
宿泊中に最も苦労したのが、シャワー利用時だ。排水設備が適切に整備されておらず、シャワーの排水がベッドルームに逆流したのだという。「シャワーを浴びる度に部屋が水浸しになる。どんな安宿でも、こんなケースは見たことない」と怒り心頭の様子。シャワー利用時はベッドルームの床にタオルを敷き、吸水させていたという。実際に見せてもらった部屋の床には、建設時に使用したペンキとみられる塗料が付着しており、そのまま放置されていた。
他の日本人宿泊者からは電気が来ていない、エアコンが故障し、扇風機で代用しているといったエピソードも聞いたといい「仮設の宿泊施設そのものは悪いものではないが、設計が杜撰すぎる。W杯という世界的なイベントに来た観戦客に提供していい代物ではない」と批判した。
記者も別の施設だが、郊外の1泊1万5000円程度の部屋に宿泊した。概ね満足しているが、排水速度が遅く、シャワールームに水がたまりすい、シャワーカーテンがない(同じ施設の別部屋にはあった)など細かな点での不備があった。
FIFAは10年12月の理事会で、22年大会の開催地にカタールを選出。バングラデシュなどからの外国人労働者への人権問題や招致をめぐる汚職疑惑が浮上する中、酷暑のため、これまで6月開催だったW杯を異例の冬開催にしてまで大会開催を強行した。
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中東地域で初めてのW杯開催国となったカタールは、近隣国UAE(アラブ首長国連邦)のドバイなどと異なり、観光資源に乏しく、W杯級の規模を誇る国際イベントの開催経験も少ない。招致決定から12年間と十分な時間があったにも関わらず、杜撰な工事が横行したことからも、国際イベントを成功させる難しさがあらためて浮き彫りになったといえるのではないか。
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