変革の財務経理

【インボイス制度の一問一答】どんな場合でも、絶対に適格請求書を交付しないとダメなのか?インボイスQ&A

» 2022年12月26日 07時00分 公開
[山口拓ITmedia]

 消費税の適格請求書等保存方式(インボイス制度)が令和5年(2023年)10月1日に導入されます。前回に続き、インボイス制度の中身(義務編)をQ&A形式で解説します。筆者は税理士の山口拓氏。

Q36 適格請求書発行事業者は、いかなる場合も必ず適格請求書を交付しなければならないのでしょうか?

A36 適格請求書発行事業者には、国内において課税資産の譲渡等を行った場合に、課税事業者である相手方からの求めに応じて適格請求書の交付義務が課されています。従って、消費者や免税事業者に対する適格請求書の交付義務はありません。

 なお、次の取引は、適格請求書発行事業者が行う事業の性質上、適格請求書を交付することが困難なため、適格請求書の交付義務が免除されています。

(1)3万円未満の公共交通機関(船舶、バス又は鉄道)による旅客の運送

(2)出荷者等が卸売市場において行う生鮮食料品等の販売(出荷者から委託を受けた受託者が卸売の業務として行うものに限ります)

(3)生産者が農業協同組合、漁業協同組合又は森林組合等に委託して行う農林水産物の販売(無条件委託方式かつ共同計算方式により生産者を特定せずに行うものに限ります)

(4)3万円未満の自動販売機及び自動サービス機により行われる商品の販売等

(5)郵便切手類のみを対価とする郵便・貨物サービス(郵便ポストに差し出されたものに限ります)

Q37 適格請求書に記載すべき適格請求書発行事業者の名称は、正式名称を必ず記載しなければならないのでしょうか?

A37 適格請求書に記載する名称については、正式名称の他に、例えば電話番号を記載するなどして適格請求書を交付する事業者を特定できれば、屋号や省略した名称などの記載でも構わないとされています。

Q38 適格請求書に記載すべき適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号、課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容、書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称については、取引先コードや商品コード等の記号などで記載することは認められないのでしょうか?

A38 適格請求書の記載事項については、取引先コード、商品コード等の記号、番号等による表示で構わないとされています。

 ただし、適格請求書発行事業者の氏名又は名称及び登録番号につき、取引先コード等の記号、番号等で表示する場合においては、当該記号、番号等により、登録の効力の発生時期等の履歴が明らかとなる措置を講じておく必要があります。

 さらに、課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容については、表示される記号、番号等により、その資産の譲渡等が課税資産の譲渡等かどうか、また、その資産の譲渡等が課税資産の譲渡等である場合においては、軽減対象課税資産の譲渡等かどうかの判別が明らかとなるものであり、かつ、適格請求書発行事業者とその取引の相手方との間で、表示される記号、番号等の内容が明らかであるものに限られます。

著者紹介:山口 拓(やまぐち・たく) 税理士・経営支援責任者

消費税専門税理士。また「窮地にある中小企業を1社でも多く救いたい」との使命感を持ち、売り上げアップや経営助言など中小企業に特化した支援を積極的に行っている。さらに、顧問先の税務調査の負担軽減のため税理士法上の書面添付制度を活用し、平成30年度には税務調査省略割合100%の実績を上げている。https://www.yamaguchitaku-office.com/

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.