2022年のファッション業界振り返り 専門家が注目する「3つのキーワード」とは?磯部孝のアパレル最前線(2/4 ページ)

» 2022年12月31日 05時00分 公開
[磯部孝ITmedia]

 22年の大型M&Aといえばセブン&アイ・ホールディングス傘下のそごう・西武の売却(2500億円)、マッシュホールディングスの株式過半数の譲渡(2000億円)が挙げられるが、やはり両社とも外国系投資ファンドが提携先だった。しかし、M&Aの目的は大きく異なるようで、その辺りを少し取り上げてみたい。

 セブン&アイの方は、「物言う株主」として知られる米投資会社バリューアクト・キャピタルが、営業利益の大半を占めるコンビニ事業に集中する事業戦略の発表や、苦戦する非中核事業の改革を主張している。こうした動きも影響したのか、子会社のオシュマンズ・ジャパンの発行済み株式の全てを靴流通大手のエービーシー・マートへ譲渡するなどの動きも見せている。

画像はイメージ、出所:ゲッティイメージズ

 こうした動きの中で、そごう・西武は、米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループへの売却が決まった。フォートレスは西武池袋本店や、そごう千葉店などの主要店舗に家電量販店のヨドバシカメラを誘致する予定のようだが、西武池袋本店の不動産の一部を保有する西武ホールディング側からは、百貨店がかねて取り込んできた顧客層も重視したいなどの意向から、難色が示された。今後も関係者間での協議、調整が続く模様だ。

 マッシュホールディングスは、米投資ファンドのべインキャピタルに株式の過半数を譲渡。ベインキャピタルは13年にカナダの高級ダウンブランドのカナダグースに出資し、17年にニューヨークとトロントの株式市場に上場させるなど、アパレル経営実績や上場ノウハウを持つ。今回の契約を機に、中国を中心とした海外事業の拡大やデジタル化を進め、企業価値を高めた上で3〜5年後の新規株式公開(IPO)を目指すという。

 この他にも、ワールドがナルミヤ・インターナショナルを買収、ストライプインターナショナルが、ティーキャピタルパートーナーズの出資を受け入れるなどの話題があった。企業の再生・変革を促す手法の一つであるM&Aは、医療に例えるならば「一大手術」に近い処置といえる。資本の安定と引き換えに、今後は新しい物差しによる整理も行われよう。

 ファッション業界では、過去にアダストリアがトリニティーアーツの買収とともにウィンウィンの関係が結ばれた例がある。買収した側と、買収された側の良好な関係を築けることが理想的なM&Aだが、その道筋通りに進んでいくのに楽な方法などは決してない。今後の動向にも引き続き注目していきたい。

「リアル店舗シフト」もキーワード

 その他の注目トピックとしては、オンラインに特化していた企業が、リアル店舗の出店をする流れが挙げられる。これまでオンラインでサービスを展開していた企業が、リアル店舗に求めるコンテンツは何か。それぞれのケースからその理由について考えてみたい。

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