そこで、小田氏は「投資なのか、単なる費用なのかを意識した支出になっているかどうかを見るのがポイント」と話す。
「自治体の会計は、単年度の大福帳のようなもの。企業では当たり前のBS、PLという概念は自治体では一般的でなく、投資と費用の違いを理解できていない職員も多い。もし、支出から投資か費用かを意識していることが読み取れれば、最低限の経営的な感覚があると推測できます」
小田氏は、多くの首長にインタビューしてきた経験から、街を変えつつある首長たちにはいくつかの共通項があると指摘する。
「非常にざっくり、大きく分けると『けん引型』『対話型』という2つのタイプのリーダーがいると思います。どちらの場合でも、自治体の未来についてのあいまいな問いに対し、その人なりのビジョン、哲学に基づいた答えが返ってくるのが共通したポイントです。その明確な方向性が、変化を生み出す突破力になっているのだろうと思います」
自治体外部との関係も大事だという。外に開いていく、自ら外に行く、外から人が来るなどという形で外からの視点を大事にしているというのである。社内だけ見ていては業績は上がらないし、ましてや新規事業などあり得ないと考えるとビジネスと都市経営には共通項がある。
その他、マンパワーや属人性だけに頼らない仕組みづくりも重要だと小田氏は話す。
「施策、仕掛けの継続性、再現性も大事です。例えば、首長が変わっても、その施策を継続し得るか。強すぎるリーダーの後に来る人は前任者の影響を消したがるものだからです」
ただし、首長のカラーが出やすいのは人口10万人までの小規模な自治体だと松本氏は話す。小規模な自治体では市民と首長の距離が近く、個性を出しやすいが、場合によってはさまざまなしがらみから大胆なことができないこともあるからだ。
その一方で、規模の大きな自治体は、首長の資質や市民との関係、歴史的な経緯などの個別事情や“しがらみ”にそれほど左右されず、計画的な街作りをしやすい。松本氏は、例として21年に兵庫県尼崎市が警察と連携して行った通称「かんなみ新地」と呼ばれる風俗街の一斉摘発を挙げた。
「もちろん一斉摘発ができたのは市長の決断も大きいのですが、人口規模46万人弱の都市が本気になったからできたことでもあります」
規模によって首長に求められるものも変わるのだ。
松本氏は、街の変化に関して重要な指摘をしてくれた。それは、「首長が変わるときは、街が変わりたがっているとき」という点だ。
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