値上げしたスシロー、値上げしなかったサイゼリヤ…… 話題のトピックから見えた外食産業の苦悩と未来長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/6 ページ)

» 2023年01月05日 06時34分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

相次ぐ値上げ

 22年を通して、外食の値上げが相次いだ。

 外食に限らず、食品の価格が上がっている。食材である食用油、小麦、大豆、肉、魚などの仕入価格が高騰しているので、仕方ない。

 帝国データバンクの「『食品主要105社』価格改定動向調査」(12月)によれば、22年通年の値上げ品目累計は2万822品目で、値上げ率平均は14%だった。

2022〜23年の食品値上げ。TDB調べ(出所:プレスリリース)

 値上げの背景に何があるのか。まずは、コロナ禍から回復していく過程で発生した人手不足。国内外を問わず、従業員を雇うのに時給を上げなくては、人が来なくなった。都内における牛丼店の深夜帯の時給は1800円程度にまで上がっているケースもある。

 もう1つは円安。現在は1ドル=130円程度にまで戻してきているが、一時期は150円近くに迫った。実は中国の人民元、韓国のウォン、EUのユーロなど、世界中の通貨がドルに対して下落していて、ドルの独歩高になっている。日本の食料自給率はカロリーベースで38%で、生産額ベースでは66%。安価な食材ほど、輸入に頼っている。庶民の味方といわれる安価な飲食店ほど、輸入食材に依存しているので、円安が大きく影響する。

牛丼など和風ファストフードも好調だった

 22年2月に始まった、ロシア・ウクライナ戦争の影響も大きい。ロシアは世界最大級の天然ガスと石油の生産国。ロシアとウクライナは、ヨーロッパの大穀倉地帯。資源と食料で、世界的な逼迫(ひっぱく)の要因となっている。また、欧州から日本への空輸では最短のシベリアルートを飛べないので、迂回による輸送コストが多くかかっている。

 さらに、厄介なのは日本の業者は食料の輸入において、中国に買い負けている。経済が豊かになれば牛肉の消費が増えるというが、近年の中国にも当てはまる。また、中国でも和食がブームなので、海産物の需要も増えている。中国の業者は、日本の業者のような細かい要求はせず、多少高くても買うので、輸出する側に喜ばれているという。

 あまりにも多くの外食企業が値上げしたので、いちいち追えないが、総じて消費者は仕方がないものとして受け入れているようだ。

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