値上げしたスシロー、値上げしなかったサイゼリヤ…… 話題のトピックから見えた外食産業の苦悩と未来長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/6 ページ)

» 2023年01月05日 06時34分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

回転寿司でも値上げ相次ぐ

 値上げの影響が業績低下に最も響いたのは、回転寿司だ。

 あきんどスシローが展開する「スシロー」は、1皿の最低料金が110円、一部都心部店で130円だったが、22年10月1日より、120円、130円、150円に3分割された。1皿150円とは本当に高くなった感があるが、東京23区、大阪市内中心部に集中している。

 しかし、値上げの影響は絶大で、既存店売上高が10月は81.5%(前年同月比、以下同)、11月は74.8%にまで落ちた。11月は実に売り上げの4分の1が失われたことになる。

 もっとも、スシローの場合は、販売されていない商品がテレビやネットで宣伝される「おとり広告」など一連の品切れ問題が響いた。22年6月の既存店売上高が97.5%と前年を割ると、7月は89.8%、8月は93.7%、9月は91.9%と不振が続いていた。そこに値上げが重なってダブルパンチを受けた格好だ。

スシローでは値上げにより、最低料金が1皿120円〜150円になった

 くら寿司も、同じく22年10月1日に、1皿の最低価格を110円から115円に引き上げた。ただし、220円皿は165円に値下げしたので、単純な値上げではなかった。

 その結果、既存店売上高は、10月は106.1%、11月は96.4%と、11月に失速している。ただし、21年のくら寿司は、「GO TO EAT」キャンペーンで非常に盛り上がっていた。コロナ前の19年との比較では、10月が107.2%、11月が106.5%となっており、むしろ好調のようだ。消費者は1皿5円の値上げなら許容できるが、10円なら心折れるのか。さらなる観察が必要だ。

くら寿司も最低料金を1皿115円に値上げ

 カッパ・クリエイトが経営する「かっぱ寿司」は、1皿110円を維持。しかも22年9月14日には30品目が追加された。結果は、既存店売上高が9月は122.2%、10月は98.7%、11月は101.2%となった。

 同社は前社長の田邊公己氏が、社長就任前に前職で勤めていたゼンショーホールディングス傘下の「はま寿司」の仕入価格のデータなどを、元同僚から複数回受け取ったとして、9月30日に不正競争防止法違反で逮捕された。そのわりには、売り上げが落ちていない。

 法人としてのカッパ・クリエイトも、起訴されている。有罪になれば、イメージの悪化は避けられないだろう。

かっぱ寿司は1皿110円メニューを増やしている

 スシローの熱心なファンの中には、「昔のように全部100円で、圧倒的な品質の寿司を出してほしい」と願う人もいる。デフレで魚がよく獲れていた時代にはできていたが、もうできなくなったことに不満をぶつける人も多い。運営も、企業努力に限界があって、仕方なく値上げをしているのだが、納得されていない。

 業種が違うが、不振に悩むすかいらーくグループの「ガスト」が、22年11月24日より、ミシュランシェフの「sio」鳥羽周作氏監修で、あっと驚く初のコース料理を、ハンバーグで仕掛けてきた。鳥羽氏はコロナ禍でも、スシローとコラボした「すき焼き海鮮しゃり弁」や、「ミニストップ」とコラボした「タレ弁」シリーズなど、庶民派グルメでも実績を重ねている。

ミシュランシェフのsio、鳥羽周作氏(出所:プレスリリース)
鳥羽周作シェフと共同開発した、ガストの感動ハンバーグのコース(出所:プレスリリース)

 スシローでは既に鳥羽氏とのコラボ例もある。再浮上には回転寿司とは思えない、何らかのサプライズがほしい。例えば、マクドナルドやすき家のように、オリジナルの店内ラジオを始めてみる手もあるだろう。

 かっぱ寿司もいずれ値上げせざるを得ないと見るが、どこまで価格を維持して利益率を上げられるか、注視したい。

すき家。苦境に陥った時、すき家RADIOという店内放送を導入した

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