値上げの影響が業績低下に最も響いたのは、回転寿司だ。
あきんどスシローが展開する「スシロー」は、1皿の最低料金が110円、一部都心部店で130円だったが、22年10月1日より、120円、130円、150円に3分割された。1皿150円とは本当に高くなった感があるが、東京23区、大阪市内中心部に集中している。
しかし、値上げの影響は絶大で、既存店売上高が10月は81.5%(前年同月比、以下同)、11月は74.8%にまで落ちた。11月は実に売り上げの4分の1が失われたことになる。
もっとも、スシローの場合は、販売されていない商品がテレビやネットで宣伝される「おとり広告」など一連の品切れ問題が響いた。22年6月の既存店売上高が97.5%と前年を割ると、7月は89.8%、8月は93.7%、9月は91.9%と不振が続いていた。そこに値上げが重なってダブルパンチを受けた格好だ。
くら寿司も、同じく22年10月1日に、1皿の最低価格を110円から115円に引き上げた。ただし、220円皿は165円に値下げしたので、単純な値上げではなかった。
その結果、既存店売上高は、10月は106.1%、11月は96.4%と、11月に失速している。ただし、21年のくら寿司は、「GO TO EAT」キャンペーンで非常に盛り上がっていた。コロナ前の19年との比較では、10月が107.2%、11月が106.5%となっており、むしろ好調のようだ。消費者は1皿5円の値上げなら許容できるが、10円なら心折れるのか。さらなる観察が必要だ。
カッパ・クリエイトが経営する「かっぱ寿司」は、1皿110円を維持。しかも22年9月14日には30品目が追加された。結果は、既存店売上高が9月は122.2%、10月は98.7%、11月は101.2%となった。
同社は前社長の田邊公己氏が、社長就任前に前職で勤めていたゼンショーホールディングス傘下の「はま寿司」の仕入価格のデータなどを、元同僚から複数回受け取ったとして、9月30日に不正競争防止法違反で逮捕された。そのわりには、売り上げが落ちていない。
法人としてのカッパ・クリエイトも、起訴されている。有罪になれば、イメージの悪化は避けられないだろう。
スシローの熱心なファンの中には、「昔のように全部100円で、圧倒的な品質の寿司を出してほしい」と願う人もいる。デフレで魚がよく獲れていた時代にはできていたが、もうできなくなったことに不満をぶつける人も多い。運営も、企業努力に限界があって、仕方なく値上げをしているのだが、納得されていない。
業種が違うが、不振に悩むすかいらーくグループの「ガスト」が、22年11月24日より、ミシュランシェフの「sio」鳥羽周作氏監修で、あっと驚く初のコース料理を、ハンバーグで仕掛けてきた。鳥羽氏はコロナ禍でも、スシローとコラボした「すき焼き海鮮しゃり弁」や、「ミニストップ」とコラボした「タレ弁」シリーズなど、庶民派グルメでも実績を重ねている。
スシローでは既に鳥羽氏とのコラボ例もある。再浮上には回転寿司とは思えない、何らかのサプライズがほしい。例えば、マクドナルドやすき家のように、オリジナルの店内ラジオを始めてみる手もあるだろう。
かっぱ寿司もいずれ値上げせざるを得ないと見るが、どこまで価格を維持して利益率を上げられるか、注視したい。
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