国の地方鉄道に対する支援はいくつかある。「安全性の向上に資する設備更新等」「インバウンド対応型鉄軌道車両」「LRTシステム」「全国共通ICカード」「コミュニティー・レール化」だ。それぞれ設備投資に関する制度で、赤字を補てんする制度はない。
しかし鉄道事業者の自助努力には限界があるから、鉄道の存続支援については沿線自治体の負担になる。設備投資にしても国の全額補助はなく、自治体と同比率にとどまる。つまり、「鉄道を残す」には、地域と自治体の覚悟がいる。それを国が全て面倒を見なさいという考え方は果たして正しいか。JRが「公共交通の維持のために、低コストのバスにしたい」というなら、国民も同じ。血税の無駄遣いはやめてほしい。
沿線自治体は地域公共交通を真剣に考えているか、その上で鉄道を残す覚悟があるか。そこに知恵を絞らない地域に対しても「国が鉄道を残せばなんとかなる」でいいのか。
私はガラ空きの車内でのんびり走る鉄道が好きだ。乗り鉄のほとんどが混雑を嫌う。ローカル鉄道がなくなっても、葬式鉄が終ったら、別の路線に乗って楽しむ。それだけだ。つまり、乗り鉄なんて鉄道事業にとって本質的にはアテにならない存在だ。
もう一度問う。
そのローカル鉄道は「便利」ですか。「楽しい」ですか。
その地域にとって「鉄道」が本当にベストな選択ですか。
その結果として鉄道を残せるとしたら嬉しい。鉄道ファンとして、本来の機能、役割を果たしてる鉄道が頼もしく、ありがたい。
乗り鉄。書き鉄。1967年東京都生まれ。年齢=鉄道趣味歴。信州大学経済学部卒。信州大学大学院工学系研究科博士前期課程修了。出版社アスキーにてPC雑誌・ゲーム雑誌の広告営業を担当。1996年よりフリーライター。IT・ゲーム系ライターを経て、現在は鉄道分野で活動。著書に『(ゲームソフト)A列車で行こうシリーズ公式ガイドブック(KADOKAWA)』『ぼくは乗り鉄、おでかけ日和。(幻冬舎)』『列車ダイヤから鉄道を楽しむ方法(河出書房新社)』など。公式サイト「OFFICE THREE TREES」ブログ:「すぎやまの日々」「汽車旅のしおり」。
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