日光・鬼怒川エリアは、東武鉄道が長い時間をかけて開発してきた観光地である。鬼怒川温泉は近年人気がなくなっているようだが、「SL大樹」の運行を開始し、地域の観光振興などに力を入れている。
観光客に人気の日光エリアをさらにテコ入れするためにスペーシア Xを導入し、特急に乗ったときから旅行であるという高揚感を強める。現地ではSL大樹が迎え、鉄道に乗る楽しみを十二分に味わえるようにする。そして世界的にも有数の観光地・日光の旅を味わってもらう。そうした「おもてなし」戦略のもと、スペーシア Xは生まれることになる。
スペーシア Xはまず2編成で導入し、続いて2編成。ということは、まずは観光に便利な時間帯に運行し、その他の時間帯は旧来のスペーシアか、リバティを運行する。館林・太田方面の「りょうもう」用の車両も老朽化が進んでおり、500系リバティへの置き換えを進めなければならない状況にある。もちろん、日光・鬼怒川方面の100系スペーシアも老朽化が進む。
となると、リバティは東武鉄道の普段使いの特急として、さらに増備を進め、多くの特急列車をこの車両で走らせることになる。日光・鬼怒川方面でも観光ではなくビジネスで利用する人の多い時間帯は、徐々にリバティに置き換えられることになる。
リバティは普段使いの車両とはいえ、乗客として快適な時間が過ごせる車両であることは確かである。また、編成のフレキシブルさにより、野岩鉄道方面から浅草に直行できる利便性も確保している。分割併合の容易さにより、さまざまなバリエーションの列車を運行させる可能性を秘めている。
一方、日光・鬼怒川という一大観光地を沿線に抱える東武鉄道にとって、それだけで誘客できないのは確かである。それゆえに豪華で快適なシートやカフェサービスも備えた列車を運行し、それを東武特急のフラッグシップ車両とする。
便利さだけでは、乗客を引き付けられない。非日常の快適さ、華やかさもあって初めて観光客の誘客も可能になるというわけだ。ここで妥協することは戦略的に不可能だからこそ、東武はスペーシア Xを世に送り出す。最高の体験を鉄道で味わってもらうことが、観光客を集めるためには必要なのである。
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