米国でアマゾンやウォルマートといった巨大な資本を持った小売企業が、ヘルスケアビジネスを買収する動きを見せており、注目が集まっています。
リテール大手がなぜ医療ビジネスに参入するのでしょうか? 今回は、巨大な米国の医療業界に参入するリテール大手の取り組みとその狙い、戦略についてご紹介します。
まず、米国の医療業界の規模がどれほど大きいかを紹介します。調査によると、米国の国民医療費は2021年に4.3兆ドル(554兆円以上)、1人当たり1万2914ドル(約166万円)に達し、28年には6.2兆ドル(800兆円近く)に達すると推定されています(メディケア・メディケイド・サービスセンター調べ)。
また、コンサルティング大手のデロイト・トーマツによると、現在の増加ペースが続けば、2040年までに、医療費は21年時点の3倍の約12兆ドル近くに達し、GDPの26%を占めると予測されており、これは先進国の中でも一番高い数値になるといいます。
このように巨大な産業である医療業界に、近年積極参入しているのが冒頭で述べたアマゾンやウォルマートなどの小売り大手企業です。アマゾンは、22年7月に医療サービスを提供するOne Medical(ワンメディカル)を5400億円相当で買収し、医療サービスの拡充に向けて本腰を入れて取り組む姿勢を示しました。
米国では、国民に健康保険加入義務はなく、民間企業が提供する保険に加入することが一般的です。かかりつけ医の登録が必要で、保険会社のネットワークから選ぶシステムがあります。日本とは異なり、病気やケガ、健康診断、健康相談も基本的には全てかかりつけ医を受診し、特定の疾患で専門医に受診する場合は、まずかかりつけ医から紹介状をもらう必要があります。
このように米国の「プライマリーケア(初期診療)」の市場は、民間保険会社の選定するかかりつけ医に依存するシステムになっており、かかりつけ医が自宅や勤務先から遠くにいる場合も珍しくありません。また、患者がある程度自由にかかりつけ医を選べるような保険プランは、通常高額になっています。
アマゾンはそんな診察予約や薬局への処方薬の受け取りといったプライマリーケアについて、「人々のヘルスケア体験を再構築することを目的としている」と宣言しており、これに非常に期待がかかっています。
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