自治体DX最前線

「バス共同経営」の熊本県でMaaSアプリサービス開始 まるで公共交通問題のデパートだ杉山淳一の「週刊鉄道経済」(4/6 ページ)

» 2023年02月04日 10時05分 公開
[杉山淳一ITmedia]

「my route」で「バス共同経営」に加わるサービス

 熊本県で、新たにMaaSアプリ「my route」のサービスが始まった。参加事業者は熊本県MaaS推進交通事業者連絡会に加盟する14社。このうち公共交通に直接関わる会社はJR九州、西日本鉄道、熊本電鉄、肥薩おれんじ鉄道、南阿蘇鉄道、くま川鉄道、熊本市交通局(路面電車)、九州産交バス、産交バス、熊本都市バス、熊本バス、TaKuRoo(タクシー)、ANAだ。バス共同経営に参加する会社も含まれている。

 取り組みの第一段階として、1月28日から5種類のデジタルチケットを販売している。このうち「わくわく1dayパス区間指定1(大人700円)」と「わくわく1dayパス区間指定2(大人900円)」がバス共同経営のサービス地域を含んでいる。

「わくわく1dayパス区間指定1」の利用可能エリア(「my route」アプリより)
「わくわく1dayパス区間指定2」の利用可能エリア(「my route」アプリより)

 このほかに「熊本市電1日乗車券(熊本市交通局・大人500円、小人250円)」「阿蘇火口線1日乗車券(産交バス・大人1300円、小人650円)」「おれんじ1日フリー切符(肥薩おれんじ鉄道・大人2800円、小人1400円)」がある。今後の展開として、3月中旬以降に「鉄道の往復きっぷ+商業施設商品券引換券」などを販売する予定だ。

 バス共同経営の施策は「熊本県民に最適な交通サービスを提供する」という主旨が先行していた。従来はバス会社が集中する区間であっても、購入したバス会社以外のバスには乗れなかった。現在はバスIC共通定期券サービスによって、利用区間のすべてのバスに乗れる。利用者にとって、その区間のバスの運行数は減ったとしても乗れるバスが増えた。

 ここに「my route」のデジタルチケットが加わる。バス共同経営で改善された路線網を旅行者も気軽に使えるようになった。バス会社は運行減で経費節約、利用者から見るとバスが限定されないから増便だ。利用者目線の捉え方がドイツの運輸連合に近い。旅行者も使えるチケットの登場で、ヘルシンキ型のMaaSにさらに近づいた。乗り継ぎ案内も「my route」が示すから、熊本県は東京や大阪の地下鉄でフリーきっぷで乗りこなすようにバスを使える。

熊本エリアで使えるデジタルチケット(「my route」アプリより)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.