「乗客1000人未満」でローカル線を廃止? 存廃議論「国は積極的に関与すべき」杉山淳一の「週刊鉄道経済」(1/9 ページ)

» 2022年08月06日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

 先週は新聞やテレビなど多くの報道機関で「乗客1000人未満のローカル線は存廃論議」などと報じられた。これは国土交通省が2022年7月25日に発表した「地域の将来と利用者の視点に立ったローカル鉄道の在り方に関する提言(リンク)」がきっかけだ。

 くしくも3日後の7月28日にJR東日本が「ご利用の少ない線区の経営情報を開示します」として、2000人/日未満の線区の経営情報を公開した。いままでは平均通過人員のみ開示し「これだけ利用者が少ないんですよ」にとどめていたけれど、今回は「収支(これだけ赤字です)」「営業係数(100円の収入を得るためにこれだけ費用がかかります)」「収支率(費用に対して収入はこれだけです)」が示された。

国土交通省が発表した「地域の将来と利用者の視点に立ったローカル鉄道の在り方に関する提言」。断片的な報道より、原典で真意を読み取ってほしい

まずは「1000人/日未満の路線から」

 「利用者が少ない」は先刻承知。そこに具体的な金額が示されたから、赤字金額の多さに驚く人が多かった。特に営業係数において、陸羽東線のうち鳴子温泉〜最上間は「100円稼ぐために2万2149円かかる」。久留里線のうち久留里〜上総亀山間は「100円稼ぐために1万7074円かかる」。具体的な数字を出されると、自分の財布を握りしめて震えてしまいそうだ。

 しかも久留里線は千葉県だ。東京の近所といえそうな路線が大赤字である。これには驚く人も多かっただろう。特にテレビのニュースは「事実を伝えて視聴者をビックリさせたい」が主旨のようだから、格好のネタだった。

くしくもJR東日本は赤字線の収支を公表した(出典:JR東日本、ご利用の少ない線区の経営情報を開示します
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