「乗客1000人未満」でローカル線を廃止? 存廃議論「国は積極的に関与すべき」杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/9 ページ)

» 2022年08月06日 08時00分 公開
[杉山淳一ITmedia]

「存廃論議には応じない」という自治体の「悪手」

 これまでローカル線の論議は「平均通過人員2000人/日未満」からスタートしていた。JR北海道は16年11月に「当社単独では維持することが困難な線区」として「2000人/日未満」を掲げ、JR西日本も20年4月に「ローカル線に関する課題認識と情報開示について」として、2000人/日未満を対象とした。JR四国も開示資料で2000人/日未満を赤線で示した。JR九州も2000人/日未満を線区別収支の開示対象としている。そして今回、JR東日本も同じ数値を基準としている。

 この2000人/日未満という数字の根拠は、1980年の国鉄再建法にさかのぼる。鉄道路線を平均通過人員(輸送密度ともいう)などで分類し、利用者の少ない路線をバスに転換する。輸送密度については、本連載で過去に説明しているので、参考にしてほしい。

【関連記事】ローカル線足切り指標の「輸送密度」とは何か?(16年9月2日の本連載)

 対象は83線区で、このうち第1次廃止対象線区と第2次廃止対象線区の基準が2000人/日未満だ。第3次廃止対象線区は4000人/日未満だった。なお、代替道路がないという理由で対象から外れた線区もある。

 これらの路線をすべて処理しても国鉄再建のメドが立たず、というより、それだけでは焼け石に水のような累積赤字だったけれども、次に国鉄分割民営化が検討され、JRグループが発足した。つまり当時、JR各社の発足時は、廃止対象外だった路線を除き、4000人/日未満の線区がないという建前だった。

 しかしその後、地方路線の人口減少が進み、国鉄時代の廃止対象レベルまで平均通過人員が落ち込んだ。民間企業、上場企業でもあり、赤字事業の放置はできない。そこで、過去にバス転換の対象として使われた「平均通過人員2000/人」に注目した。

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