阿部氏の思いと、「イノベーションを創出したい」という札幌市の思いが重なり、北欧・バルト諸国で見られる小さな街のスタートアップエコシステムを札幌市に形成しようという動きが始まった。
札幌市のスタートアップエコシステム形成に携わる札幌市経済観光局 イノベーション推進課 スタートアップ推進係長の中本大和氏は、「北海道が抱えるさまざまな課題をイノベーション創出により解決したい」と話す。
「人口減少や高齢化の進行は深刻で、それに伴い国内の食料供給基地としての役割を担い続けるのが難しくなっている現状があります。全都道府県の中で最大の面積を誇るがゆえに過疎地にも教育・医療を行き届かせなくてはなりません」(中本氏)
これらの課題解決に向け、札幌市では野心的なKPIを設定してスタートアップエコシステムの形成に努めている。
北欧・バルト諸国とのつながりも着々と構築する。例えば、札幌イノベーション創発拠点として運営されているIKEUCHI LAB(イケウチラボ)では、フィンランド・イノベーション・エコシステムの中心的存在とも言えるDEMOLA GLOBAL(デモーラ グローバル)と連携して、北欧流イノベーション創発プログラムを開催したり、北海道のスタートアップ・企業・地方自治体と北欧との共創を支援したりしている。
冒頭で紹介したデンマーク発のテックイベント「テックバーベキュー サッポロ」も、北欧とのつながりを地道に築いていった結果、札幌での初開催が決まった。歴史ある「さっぽろテレビ塔」を会場に選んだのは、市民の愛着がある古い場所にイノベーションやテクノロジーを持ち込むことで、すべての世代に身近に感じてほしいという意図があるためだ。
ピッチコンペティションには海外スタートアップを含む8社が出場し、北海道を拠点にグローバルなビジネスを展開したいと意欲を示した。そのうち、独自のAIアルゴリズムで最適な旅行プランを提案するデンマークのスタートアップ「Tryp.com」は、すでに北海道のスタートアップビザを取得しており、メンバーの1人が札幌市に移住している。
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