創業時からフルリモート経営を続けている今氏に、そのメリットとデメリットを尋ねた。
「組織としてのメリットは、エリアを問わないので優秀な方を採用しやすい、プライベート都合などによる退職リスクを減らせる、コストがかからないの3点が大きいですね。経営者視点だと、プライベートの変化に影響されずに働けるうえに、前例がないような働き方や組織づくりで実績を出せているのはキャリアとしてポジティブだろうと思います」
マルゴト社は、社員が数人だった時代から毎月約200人の求人応募があり、22年にいたっては年間で9000人を超える応募があったという。「場所」の障壁がないことのインパクトの大きさを物語る数字だ。
「デメリットは、思ったより離職率が高い、フルリモート経営による機会損失がある、イベント時に盛り上がりに欠ける、フルリモートでマネジメントできる人材が市場にいない、などでしょうか。
初めてフルリモートで働く方の場合、実際に働いてみて1日中誰とも会わない、話さないスタイルが合わずに退職するのは10人に1人ぐらいいます。案外多いなあという印象です。
フルリモートで価値を出せる体制をバッチリ整えても、『週1回でもオフィスに来てもらえないか』『定例ミーティングだけ対面にできないか』と対面を求める企業もあります。当社は同業他社と比較して低価格のサービス料金で採用の成功にコミットしており、それはフルリモート経営だからできること。そのため対面の要望がある場合はお断りしているので、事業視点ではチャンスを逃していますよね。
あと、22年に初めてオンライン表彰式を開催し、貢献してくれたチームと個人を表彰したのですが、オンラインだと”表彰された感覚”は生まれにくいです。場所や飲食の経費がかからない代わりに総額120万円の表彰金をお渡ししたり、マネージャーが熱く推薦文を読んだりして盛り上がったのですが、対面のほうが喜びが大きいかもしれません。
そして、現在の一番の課題はフルリモートでのマネジメント人材の育成です。最初からフルリモートでマネジメントできる人材はほぼ存在せず、当社のマネージャー陣も入社後に学んでスキルを身につけています。ノウハウはたまってきていますが、まだ手法を確立するまでに至っていません。ここが育たないと組織を拡大できないので悩みどころですね」
マルゴト社が売り上げを減らしてでも守り続けるフルリモート経営は、今後、新たな感染症が出てきたとしても支障が出にくい、優秀な外国人も採用しやすい、海外のクライアントも獲得しやすいといった利点もありそうだ。
新型コロナの流行が落ち着きつつある今、「やっぱり対面が一番」と出社に戻る会社もあれば、「コストも時間も削減できて一石二鳥」とリモートワークを継続する会社もある。筆者は17年からリモートワークを継続する1人だが、人生の選択肢は確実に広がった(実際に海外移住も果たした)。信頼関係の醸成には対面に勝る術がなくとも、オンラインでも8割までは可能だと思っている。
写真提供:マルゴト社
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