【お詫びと訂正:2023年4月27日8時30分 初出で1枚目の画像について、著者作成としておりましたが、正しくはJA全農たまごの公式Webサイトから引用したものでした。お詫びして訂正いたします。】
安定した価格によって家計を支え、かねて「物価の優等生」と呼ばれていた「卵(鶏卵)」にも値上げの手が忍び寄ってきた。卵の価格相場情報を公示しているJA全農たまごによれば、東京地区におけるMサイズ鶏卵の平均卸売価格は、1キロ当たり335円(3月2日午前9時発表)となった。これは2021年3月における195円から71%も高い水準で、コロナ前の水準と比較すると、たった4年で3倍にも卸値が暴騰している。
都内のスーパーでも、一昔前はMサイズの卵が10個入りのパックが100円台近辺で購入できていたものが、軒並み200円前後の価格設定となっている。卸売価格の高騰と比較して小売価格の変動は緩やかであることから考えると、スーパーなどの小売店は粗利を削っても吸収しきれないほどの値上げ圧力が襲っていると考えられる。
卵の値上げを巡り、ここ数年のコロナ禍やウクライナにおける戦争の影響に加えて追い打ちをかけているのが「鳥インフルエンザの感染拡大」だ。鶏のエサである穀物価格が上昇している中で、鳥インフルエンザによって鳥の個体数が減少している点が価格高騰の主な原因である。
そもそも、卵に対してつけられた「物価の優等生」という称号は、どこからきているのか。この言葉は「家計から見た優等生」という意味合いが強い。というのも、これまでインフレなどの物価上昇イベントが発生したり、台風などのような自然災害が発生したりしても、小売価格があまり変わらなかったからだ。
卵のように、需要が伸びれば生産量を拡大させて価格を落ち着かせることができる品目は、価格の調整機能が働きやすい。ヒナが卵を産めるようになるまで半年程度と、食肉や乳牛などと比較して生産サイクルが短いこともポイントだ。これまで卵は需給調整が行いやすい品目で、まさに物価の優等生として安定価格で家計に供給することが可能であった。
しかし、このたびのインフレ基調において、幅広い製品で「価格の弾力性」が硬直化する現象が散見される。価格の弾力性とは、価格が上昇したときに消費者の需要がどれくらい下がるかという関係をみる上で有効な指標である。
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