空手道場で先生が突きを繰り出す視線の先には、大型のモニターに映るたくさんの生徒たち――17年に那覇市で設立された、沖縄空手・琉球古武道専門の旅行会社・アゲシオジャパンが提供するオンライン稽古で、海外の門下生たちが空手を学んでいる。同社は20の空手道場と提携して、経験者向けの道場稽古や初心者向けの空手体験、ビーチでの空手稽古や聖地巡礼ツアー、座禅体験などを提供しており、国内外の人気を集める。
アゲシオジャパンの上田健次郎社長は「これまで、沖縄の流派が本土に渡ってさらにいろいろな流派が生まれてきたわけですが、元をたどれば原型は沖縄にあります。その“原型の空手”を『沖縄のグランドマスターに習ってみたい』という思いを持って、海外の空手愛好家が沖縄にやってきます」と話す。
沖縄で活動する空手の師範には、海外支部を多く持つ人もおり、毎月のように海外支部で指導する人もいる。同社の古田桂一氏は「ある先生がカナダへセミナーに行った際、7000人が集まったケースもあります」と話す。沖縄の伝統空手というカテゴリーのみならず、沖縄空手のレジェンドである個人にこそ、人を動かす訴求力があることは特筆すべきだろう。
海外インバウンド観光客の入国規制が22年10月に緩和されたことをきっかけに、空手を目的に沖縄を目指す人が戻りつつある。同社への問い合わせ件数を例にすると、これまでは月に10〜20件だったが、22年12月以降は40件以上で推移している。
コロナ禍で海外からのインバウンド客がストップしてしまった際には、道場と海外支部の生徒をそれぞれZoomでつないでオンライン稽古を始めたほか、師範が出演するトレーニング用のYouTube動画を撮影して公開するなどした。社会情勢を鑑みて半ば必要に迫られて始めたサービスではあったものの、人気を博して現在も継続している。
古田氏は「これまでのべ2500人以上がオンライン稽古に参加しました。遠隔地からも指導を受けられるだけではなく、先生としても各支部の様子が分かってコミュニケーションが直接取れるので喜ばれています」と、先生と生徒、双方よしの効果を語る。
YouTubeチャンネルを開設してから1年もたっていないが、100万回近く再生されている動画もある。「当初は、コロナ禍で外に出られない人のために動画を始めたのですが、当社のプロモーションにも効果を発揮しており、実際のツアー参加につながる例もあります」(古田氏)
YouTubeに動画を展開したことで、空手ツーリズムの“未来”も見え始めている。
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