それでは旅行支援の影響はなかったのかというと、そうではありません。ホテルに滞在する方は実感があると思いますが、旅行支援が始まって以降のホテルの宿泊料金は大きく上がっています。
実際に客単価は上昇が続いています。客単価を同様にコロナ以前の19年の同月と比べてみると
となっており、非常に大きく単価は上昇しています。
特に12月は30%増という非常に大きな伸びです。旅行支援開始以降の予約が最も増加した時期だと考えられます。集客面への好影響は大きくありませんでしたが、単価への影響は大きかった様子がうかがえます。
今回の旅行支援を利用するには、陰性証明やワクチン接種の証明書を提示する必要があるなど、客側にとって手続きがやや煩雑です。筆者が先日、ホテルを利用した際にも、ワクチンの接種証明をホテルに持ってこなかったことでもめている宿泊客がいました。この上、ビジネス利用に関しては、旅行支援を使用禁止にしている企業もあるため、宿泊料金が上がる中で宿泊を取りやめる顧客もいたことが考えられます。
また、共立メンテナンスでは「ラビスタ」「ルシアン」「和の湯宿」といったリゾートホテルの運営も行っています。
リゾートホテルに関しても稼働率は増加傾向が続き、業界平均を大きく上回る水準です。旅行支援があった22年10月以降の稼働率を2019年の同月と比べてみると
となっていてリゾートホテルに関しては稼働率も好調です。
続いて客単価をコロナ以前の19年の同月と比べてみると
客単価に関してもこちらも増加しており、リゾートホテルでは稼働率・客単価ともに増加と好調です。リゾートへの旅行の方が旅行支援の影響は大きかったということでしょう。
ではそういった状況の中で旅行支援のあった第3四半期(10月〜12月)単体の業績はどうなっているのか、ここ数年の推移を見ていきましょう。
売上高はコロナ以前を大きく上回り非常に好調です。
利益面は第3四半期までの累計ではコロナ以前の水準には及んでいませんでしたが、第3四半期単体ではコロナ以前を上回る水準まで増加しています。
そしてこれは3Qにおいての過去最高益となったとしています。旅行支援は非常に好影響を与えていたことが分かります。
ドーミーインでは稼働率はコロナ以前と比べて低い水準でしたが、一方で客単価は上昇していました。
客単価が上昇したからと言ってホテル運営にかかるコストが増加するわけではありませんし、むしろコロナ禍ではコストの見直しを進めた企業が多いです。
最近では人員削減による影響もあり、旅行支援で増加する需要を受け入れきれないホテルも出ています。こうした状況下でコスト改善と、単価上昇による収益性の良化で最高益を達成したものと考えられます。
旅行支援による単価上昇は、長く苦境にあったホテル業界に大きな好影響を与えていたことが分かります。しかしながら、1月以降は懸念点もあります。
1月10日から旅行支援の延長が決まりましたが、1月に関しては稼働率が大きく減少しています。
コロナ禍前と比較してみると
と下落しています。
単価を比較してみると、
となっていて単価の上昇は続いています。
旅行支援の影響で単価は上昇した状況ですが、完売となる予約サイトも目立ち始めています。そういった中で集客面は苦戦しているという事が考えられます。
今後も旅行支援の影響による単価上昇で、利益面は好調が続く可能性がありますが、一方で稼働率は低下した状況が続く可能性があります。泊まりたい人が宿泊料の高騰で泊まれないものの、利益は出てしまうといった、いびつな状況が生まれるわけです。
これから先も旅行支援の影響がどのように出てくるのか注目です。
共立メンテナンスでは、コロナ禍で赤字が続いていましたが大きく業績は回復し黒字転換しました。さらに旅行支援以降は、単価上昇による好影響でホテル事業は過去最高益となり好調です。
一方で1月に関しては単価上昇は続くものの、稼働率が大きく低下していますので2月以降に旅行支援の影響がどう出てくるか注目です。
決算は現場にある1次情報とメディアで出てくる2次情報の中間1.5次情報です。周りと違った現場により近い情報が得られる経済ニュースでもあります。上場企業に詳しくなりながら、決算書も読めるようになっていく連載です。
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