「オートミール」市場急拡大 これまでの健康食品ブームと何が違うのか?長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/8 ページ)

» 2023年03月07日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

拡大する市場規模

 それでは、オートミールの市場はどのくらいあるのか。22年4月に日本能率協会総合研究所が発表した有望市場予測レポートによれば、20年度には23億円だった国内オートミールの市場は、23年度には85億円にまで成長するとしている。そして、26年度には120億円になるという。

オートミール市場規模・予測(出所:プレスリリース)

 同レポートでは、21年に大手シリアルメーカーが市場参入し、市場を活性化、拡大させたと指摘。オートミールを用いて雑炊、リゾット、おにぎりなどをつくる米化がトレンドになっている。メーカーも米の食感に近い、ロールドオーツや粒の粗いスチールカットオーツの商品を投入しているとのことだ。

 メーカーによるプロモーションやレシピ提案によって、今までオートミールを食べていなかった層がトライアルして定着。今後の市場はさらなる拡大が見込まれると期待している。

 このように有望なオートミール市場で、メーカー各社はどのような取り組みをしているのだろうか。

地道に提供を続けた

 札幌市に本社がある日本食品製造(日食)は、1918年創業。日本で初めてコーンフレークだけでなく、オートミールをも製造したパイオニアだ。原料のトウモロコシや燕麦は、北海道の代表作物だったので、日本のシリアル発祥の地にもなった。

日食のプレミアムピュアオートミール

 北海道は馬産地であり、燕麦は主に馬の餌として使われていた。

 同社創業者の戸部佶(ただし)氏は、日本人の食生活改善のために欧米の食事情を研究。ヨーロッパの一部の地域で主食となっていたオートミールを1929年に発売した。

 発売後、一般消費者から「鳥の餌のようだ」などといわれることも多く、そんなに売れたわけではなかった。しかし、健康を気にする一定のファンのために地道に提供を続けたという。離乳食やクッキーなどのお菓子作りに使われる用途も、かなり知られるようになった。

日食のプレミアムピュアオートミール(出所:日食公式Webサイト)

 状況が一変したのは、新型コロナウイルス感染症が騒がれ出した20年2月頃。SNSでオートミールの愛用者によりダイエットに効果があると発信されて、突如これまで見たこともなかった数量が売れるようになった。同年7月頃には、一時在庫も尽きて販売停止に追い込まれた。日本の他のメーカーでは、当時ほとんどオートミールを製造・販売していなかったので、おのずと日食に注文が集中した。

 同年8月からは従来の3〜4倍に生産ラインを増強し、24時間体制で製造した。現状は少し落ち着いてきたが、それでも19年比で1.5〜2倍は売れているそうだ。

日食のプレミアムピュアトラディショナルオートミール(出所:日食公式Webサイト)
日食のプレミアムピュアオートミールの栄養成分と糖質量(出所:日食公式Webサイト)

 日本におけるオートミールの開拓者であるだけに、消費者の支持も厚い。商品ラインアップは、インスタントタイプ「プレミアムピュア オートミール」、ロールドタイプ「プレミアムピュア トラディッショナル オートミール」、ブランタイプ「プレミアムピュア オーツブラン」、オーガニック「オーガニックピュア オートミール」、ミックスタイプ「そのまま食べておいしい オートミール」、フィンランド産有機燕麦100%「フィンランド産オーガニックオートミール」と、多彩にそろっている。好みと用途によって、使い分けられるのが強みだ。

オートミールで作った離乳食(出所:日食公式Webサイト)

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