過労死(KAROUSHI)という言葉を世界に広めた、日本企業の悪しき風習である、「ノルマを達成するためには、月100時間、200時間の残業も厭わない。そして、体を壊すか精神を病むかの直前で表彰の対象になる」という愚かな行為を認めてしまっているのです。
以下は2018年1月、スルガ銀行の不正問題の第三者委員会が公表した「不適切融資」に関する調査報告書(以下、報告書)の192ページに記されていた文言です。この事件は、首都圏で女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を展開していた不動産会社スマートデイズが、オーナーに賃料を払えないと通告したことを発端に発覚し、明らかになりました。
結局、これらの不正行為などに関わった銀行員は、銀行のためでもなく、顧客や取引先等のためでもなく、自己の刹那的な営業成績のため(逆に成績が上がらない場合に上司から受ける精神的プレッシャーの回避のため)、これらを行ったものと評価される。
決して、違法性があるかどうか分からなかったとか、会社の利益のためになると思ってやったなどというものではない。
件の「成績が上がらない場合に上司から受ける精神的プレッシャー」とは、どのようなものだったのか。報告書に記載されているごく一部を挙げます。
むろん、今回週刊誌が取り上げた不動産大手企業での問題は「パワハラ問題」を報じたもので、「不正問題」ではありません。この部分は明確にわけてなくてはいけません。
しかしながら、精神主義に基づく経営は、過剰なノルマを生み、組織的なハラスメントや不正の温床になる。ノルマ達成を根拠に暴言や暴力が許され、ハラスメントされる被害者は「自分の命を削るか、不正に手を染めるか?」の究極の選択を迫られます。
だからこそ、国はハラスメントを絶対に「禁止」しなきゃいけないし、労働基準監督署に対して、指導や勧告をする権限を与えなきゃいけないのに、どちらも日本の法律にはない。被害者が声をあげ、裁判を起こさない限り、「外の目」が入らない。それは同時に、「命を削る人」を容認することでもあります。
挙げ句、「え? パワハラ? あの会社ならあって当然、ない方がおかしい」などと、「企業の利益を上げるには何をやっても許される」という間違った価値観が社会に浸透し、そこに問題があるのに、声をあげたくてもあげられない、苦しくても泣き寝入りするしかない状況につながっていくのです。
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