すでにコロナ禍の職場でリモートワークやオンライン会議などICTやデジタル技術の進化が急速に進んだ。全員がそろって出社しなくなり、部下とのコミュニケーションが減少し、仕事の指示や進捗状況の確認、さらには部下の育成に頭を抱える管理職も少なくない。中には今の職場から逃げ出したいという中高年管理職も増えているという。
建設関連会社の人事部長は「最近、異動願いを出してくる管理職が増えている」と語る。
「上司を通さずに人事部に異動希望を出せる年齢制限なしの自己申告制度がある。以前は別の部署にチャレンジしたいという40歳ぐらいまでの若い社員が多かった。しかしコロナ禍以降、中高年の社員や課長、中には部長もいる。ヒアリングすると、50歳を過ぎて、自分の強みを生かした得意な仕事と与えられたミッションが合わなくなってきたと言う人、あるいは自分のスキルではお客さんや取引先の要求に応えるのが難しくなったと言う人、部下との関係がうまくいかず、どう指導すればいいのか悩んでいる人もいる」
企業にとっては40〜50代のミドル・シニア層のリスキリングと戦力化が不可欠になっている。しかし実際はシニア層に関してはそれほど実施されていない。
パーソル総合研究所の「シニア従業員とその同僚の就労意識に関する定量調査」(2021年5月)によると、シニア従業員(55〜69歳)向けの教育・研修を実施状況について「実施されており、充実している」と回答した人は19.5%、「実施されているが、充実していない」が29.8%。一方「実施されていない」が50.7%と半分超を占めている。
さらに厄介なのが、シニア層は新たなスキル修得しようというモチベーションが高くないことだ。
日本CHO協会が人事担当者を対象に、自社のシニア社員の現状について聞いた質問では「専門性が高く、モチベーションも高く、業務に取り組んでいる」と回答したは9%だった。一方「高い専門性はあるが、モチベーションが低く、停滞している」との回答は18%。「技術的にも、マインド的にも停滞しており、組織に良い影響を与えていない」が6%も存在する(「ミドル・シニアのキャリア自律に関するアンケート」2022年2月)。
企業の現場を見ると、リスキリング一つとっても社員を鼓舞し、戦力化することが容易ではない。政府がリスキリングに巨費を投じても思惑通りに運ぶ保証はない。
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