くら寿司やスシローに残る、迷惑動画の爪痕 SNS運営に責任はないのか?小売・流通アナリストの視点(2/3 ページ)

» 2023年03月30日 05時00分 公開
[中井彰人ITmedia]

外食大手の動向は

 こうした環境下で今、外食大手の動向はどのようになっているだろうか。

 以下の図表は、主な上場外食企業の既存店客数の推移を、コロナ前の水準で単純計算した数値(既存店客数増減率を2020年〜2023年まで掛け合わせた数値)で比較したもので、正確な客数推移ではないが、おおまかな傾向を示している。

明暗分かれるファミレス サイゼ、ロイヤル、ジョイフルは復調

 ファミリーレストランでは、ロイヤル、ジョイフルが昨年末からコロナ禍前90%以上が続いている。サイゼリヤも追い付いて、2月には95%程度まで回復している。

 回復に遅れがみられるのが、ガストなどを展開するすかいらーくで、7割台で推移しつつ若干下げ気味であり、今後の推移次第ではさらなるテコ入れが必要かもしれない。

図表3、ファミリーレストラン

ファストフードは順調に回復 都市部の吉野家・松屋はやや苦戦

 ファストフードはマクドナルド、モスフード、すき家がほぼコロナ前に近い推移で順調に推移している。

 吉野家、松屋フーズの牛丼2社は、改善傾向にはあるものの、コロナ前9割程度までの回復となっている。この両社に関しては、大都市部店舗が多く、都市部の人流回復が遅れているというビハインドもありそうだ。

図表4、ファストフード

鳥貴族・王将が善戦するその他形態

 その他では、鳥貴族が2月にはコロナ前の95%と苦戦している居酒屋業界において目立った回復を見せている。王将フードサービスも95%程度まで戻しており、客数改善傾向を維持している。

 日高屋はまだ8割台ではあるが、緩やかな回復をみせる。これに対して、幸楽苑はほとんどが6〜7割台と極めて厳しい推移となっている。

図表5、その他大手

不祥事が続く回転寿司 「すしテロ」の影響は?

 回転寿司業態は、不祥事などで騒がれたことが記憶に新しい。くら寿司、かっぱ寿司は9割程度で推移しつつも、若干下落傾向となり、さえない推移だ。スシローは秋口の大きな落ち込みから、2月にはようやく他社並みに回復した状況にある。こうした中で、例の迷惑動画による影響が今後どうなるかは、気になるところだ。

図表6、回転寿司

 いわゆる「すしテロ」に関しては、回転寿司側は被害者であり、おおむね同情的な意見が多いと聞く。しかし、安全面への懸念が想起されることから、敬遠するようになった消費者も少なくないという。回転寿司各社は原材料高騰などの影響もあって、収益の低下が懸念されている時期でもあり、3月以降の客数に影響があるようだと、再び業績の見直しにつながる可能性もあろう。

 それでなくても迷惑動画が発端となって、寿司を回転レーンで回さなくする対応や、監視システムの強化対応を余儀なくされており、売り上げやコストに何らかの影響が及ぶことは避けられない。

 被害者であるはずの企業が迷惑行為への対策コストを負担することになるのだが、それがひいては消費者にも価格やサービス面で負担を強いることにつながるだろう。消費者の財布のひもが締まりつつあり、外食需要にも影響が及ぶ可能性が高い今、ごく一部の迷惑な行為が業界全体のコスト負担を増加させ、さらにはわれわれ消費者の外食コスパを下げることにつながるのは、何ともやりきれない思いではある。

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