CxO Insights

「人的資本経営」理解度わずか28% 普及を阻む原因は?部長・課長1000人に聞いた(2/2 ページ)

» 2023年03月31日 18時20分 公開
[ITmedia]
前のページへ 1|2       

理解が広がらない理由は?

 人的資本経営に対する関心が高い一方で、内容への理解や取り組みが広がらない背景には、どういった事情があるのだろうか。ビジネスコーチは調査の結果から「対話やコミュニケーションの不足が、推進を阻む一因になっている」と指摘する。

 人的資本経営推進の障害になっていると思うものを複数回答で尋ねた結果、「対話・コミュニケーションの不足」が34.3%でトップ。次いで「人事部門のスキル・人手不足」(33.9%)、「リスキリングの支援不足」(30.7%)――と続いた。

人的資本経営推進の障害になっていると思うもの

 コロナ禍でリモートワークが定着し、オンラインによるコミュニケーションが増えた。その結果、対話の機会が減り、組織内のコミュニケーションが活性化していない企業があると考えられる。

 人的資本経営の推進にあたっては、勤務先の企業理念や経営戦略、人事戦略を把握しておくことが不可欠だが、調査では「企業理念が見えづらい」は44.4%、「経営戦略が見えづらい」は51.9%、「人材戦略が見えづらい」は69.1%――と、軒並み人的資本経営の推進にとってマイナスとなる要素が浮き彫りになった。

 企業が進む方向性やビジョンも、社内での活発なコミュニケーションやメッセージの発信によって社内で共有される。ビジネスコーチは、良質な対話・コミュニケーションが社内で増えることで「組織や個人の生産性向上、従業員エンゲージメントの把握や改善が進む」と指摘する。

「対話でアルバイトの離職が減った」

 今回の調査では、対話やコミュニケーションが組織にもたらした変化や成果のエピソードを自由回答で募った。「アルバイトとお茶を飲みながら、聞いた話をもとに職場改善したら、アルバイトの離職率が半分以下になった」「いろいろな人とコミュニケーションを図ることで今まで気付かなかった仕組みを新たに構築できた」――などといった回答が寄せられたという。

職場での対話・コミュニケーションがもたらした組織の変化や成果

 ビジネスコーチは「組織の成長や会社価値の向上には、個の価値を最大限に引き出すことが重要。そのためには対話やコミュニケーションを通じて、社員1人ひとりの強みや魅力を理解することが必須」だと強調する。

 自社では社員同士のコミュニケーションは活発に行われているだろうか。人的資本経営の取り組みに踏み出せないでいる企業は、まず、社内のコミュニケーションのあり方を見返してみることで、取り組みのヒントが見えてくるかもしれない。

 今回の調査は、従業員数300人以上の企業に勤める20〜69歳のミドルマネジメント(部長・課長)1000人を対象に、2月15〜16日にインターネットで実施した。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.