GPTはLLM(Large Language Models)というジャンルで、大規模な自然言語AIモデルのことを指す。
何が大規模かといえば、推論を行う際の分岐条件となるパラメータの数が多いということで、推論アルゴリズムや学習させるデータによってLLMと呼ばれているものであっても、その品質はさまざまだ。
LLMに関してもさまざまな動きがあり、世界的に注目を集めることで、興味深い事象がいろいろな形で現れている。だが、今回のお題はLLMではなく画像生成AIモデル。プロンプト(指示文)を入力すると、学習させていた写真、グラフィックアート、イラストなど画像データを元に画像を生成する。
GPTを開発したOpenAIが「DALL-E(ダーリ)」を発表した頃から話題になっていたが、それが本格的にバズるようになったのは、Stable.AIが開発したStable Diffusionのソースコードがオープンになり、改良を重ねつつさまざまなAIモデルが公開されるようになったからだ。
標準のAIモデルを備えているStable Diffusionだが、既存の画像を元にして別の画像を生成させることもできる。これは他の画像AIなどでも同じだ。例えば、Snowが自撮り画像を複数枚登録することでリアルなアバター生成を可能にしたが、それも同様の仕組みだ。
Stable Diffusionは無料で利用できるオープンソースの画像生成AIということでさまざまなクリエイターを刺激した。好みの画風やイラスト、写真などを学習させたカスタムモデルがネットで交換されるようになると、手軽に美麗な映像を得られることもありコミュニティーが一気に拡大したのだ。
アジア人女性の生成が得意なChilloutMixというモデルは特に人気だ。ネットで検索してみると「あぁ、このタイプの女性はAI生成だったのか」と、あまり気に掛けていなかった人でも、一度は見かけたことがあるモデルの顔が出てくるのではないだろうか。
ChilloutMixは作者が公開を停止したが、その後、米国のAIベンチャーに権利が引き継がれた上で再公開されている。このAIモデルを用いて生成する画像に権利問題はないのだろうと想像するかもしれないが、それは分からない。
ChilloutMixで生成される画像に登場する女性が、どこかの誰か、あるいは誰かが描くイラスト、あるいは3Dモデルデータとそっくりかもしれない。そしてその元ネタとなっているモデルの権利所在や扱いについて確認する手段はない。
現状、ネットコミュニティーの中で流通しているAIモデルデータには、なんらかの権利問題が潜んでいると考えた方がいいだろう。個人利用ならばまだしも、商利用したり、自分自身の別の創作物の素材として利用することは、自分自身の身を守るためにも控えるべきだろう。そこには権利問題が潜んでいる可能性がある。
長い前振りとなったが、アドビがイニシアチブを執ろうとしているのは、画像生成AIが作り出す画像の権利について、オリジナルの作者が何らかの利益を受けられるようにするための仕組みづくりだ。
とはいえ「仕組み作り」の活動だけでは支持は得られない。
アドビはまず、権利問題がクリアになっている学習済みの生成AIを使ったサービス「FIrefly」を立ち上げ、その機能をCreative Cloudをはじめとするクリエイター向けツールに生成AIを用いた機能を統合していく。
個人レベルから企業レベルまで、幅広い人たちがツールを使ってコンテンツを生み出せる昨今、安心して商利用も可能な生成AIを提供することがスタートだ。
そして利用が広がる中で、クリエイターが自身で構築したカスタムAIモデルを販売できる市場を作ろうとしている。
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