ChatGPTの可能性と脅威、ビル・ゲイツ氏も持論展開 AI議論で注意すべき3点とは?世界を読み解くニュース・サロン(3/3 ページ)

» 2023年04月06日 10時30分 公開
[山田敏弘ITmedia]
前のページへ 1|2|3       

AIが米国の貧困層に「数学」を教える

 ゲイツ氏はさらに、こうしたビジネス的な話だけはなく、AIが世界中の問題を解決する可能性があると主張する。例えば米国における格差の大きな理由は教育であり、特に数学の学習が肝になると指摘する。AIなら貧困層の数学の学習をサポートできるという。

AIが組み込まれたロボットが先生役を務める日もそう遠くはないかもしれない……(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズより)

 ゲイツ氏は、AIがこれから不可欠な技術となっていくと確信を持っている。しかも今後は、現在のChatGPTのようにAIをクラウドなどにアクセスして使うのではなく、半導体などの進化によって、いろいろなデバイスを介して手の中に持てるようにもなると考えている。

 もちろん利点だけではない。冒頭で触れた、意図的にAIが操作されていないかも気をつけるべきだと警告している。「AIで武装した人間がもたらす脅威も存在する。多くの発明と同様に、人工知能は良い目的にも悪い目的にも使うことができる。政府は民間部門と協力して、そのリスクを抑えるための方法を考える必要がある」

 現時点でゲイツ氏はAIというのは人間が使用・管理するものだという見方を示していることが分かる。

 最後にゲイツ氏は、これからもAIについての議論は盛んに行われるだろうと予測し、その場合に注意すべき点を3つ挙げている。一つ目は、AIの良い面も悪い面も理解して、しっかりとバランスを取るようにすべきだという。2つ目は、AIは自発的に貧困層を救うように働きかけるわけではないので、AIを世界の課題を解決するために活用すべきであるということ。最後は、私たちが今体験しているAIはまだ始まったばかりで、今のAIの限界はすぐに解消するということだ。

 AIがビジネス界隈も産業界もどんどんポジティブに変えていく――それだけは間違いないなさそうだ。

筆者プロフィール:

山田敏弘

 ジャーナリスト、研究者。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフェローを経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『死体格差 異状死17万人の衝撃』(新潮社)、『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)、『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)、『CIAスパイ養成官 キヨ・ヤマダの対日工作』(新潮社)、『サイバー戦争の今』(KKベストセラーズ)、『世界のスパイから喰いモノにされる日本 MI6、CIAの厳秘インテリジェンス』(講談社+α新書)がある。

Twitter: @yamadajour、公式YouTube「SPYチャンネル


前のページへ 1|2|3       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.